「月間ショパン」「サラサーテ」「モーストリー・クラシック」3誌の最新号から読み解く“ショパン国際ピアノコンクール2015”(前編)

ショパン国際ピアノコンクール2015が終了してから、早1ヶ月が経ちました。クラシック音楽情報誌各誌では、ショパンコンクールの特集が組まれています。

Chopin piano competition 2015

私にとって不甲斐ない結果に終わったショパンコンクール。この結果の真相が少しでも明らかになればと思い、3誌を購入して読んでみました。記事の概要は次の通りです。

※Amazonでは何故か高値で取引されていますが、まだ発売されて間もない為、どこの書店や楽器店でも普通に定価で手に入ります。

  • 月間ショパン12月号…定価1080円
  • サラサーテ12月号増刊…定価1296円
  • モーストリークラシック1月号…定価1030円

月間ショパン12月号

(特集ページ数…45ページ)

・音楽評論家によるレビュー(1次~Finale)

・日本人出場者12名のコメント

・審査員インタビュー&メッセージ

  • KATARZYNA POPOWA-ZYDROŃ氏
  • ANDRZEJ JASIŃSKI氏
  • 海老彰子氏
  • JOHN RINK氏
  • MARTHA ARGERICH氏

・ピアノメーカー4社インタビュー

・ファイナリスト10名インタビュー

・ワルシャワの街の紹介

サラサーテ12月号増刊

(特集ページ数…121ページ(1冊全て))

・ファイナリスト9名インタビュー

・小林愛実さん特別インタビュー

・審査員はこう見た(コメント)

  • KATARZYNA POPOWA-ZYDROŃ氏
  • 海老彰子氏
  • Dang Thai Son氏
  • MARTHA ARGERICH氏
  • Yundi Li氏
  • EWA POBŁOCKA氏
  • Dina Yoffe氏
  • Piotr Paleczny氏

・指揮者Jaek Kaspszyk氏インタビュー

・全ステージレビュー(1次~Finale)

・審査員の採点表

・ポーランドメディアの伝え方

・ピアノメーカー(ファツィオリ以外)

・ショパンコンクールの歴史・歴代審査員

モーストリークラシック1月号

(特集ページ数…全8ページ)


・1次~Finaleのレポート

・日本人はなぜ入賞しないか

・ヤマハ技術者へのインタビュー

こうして見ると、サラサーテの力の入れようは群を抜いているのが分かります。一方、モーストリークラシックは特集の殆どを「ピアノ協奏曲の魅力」に裂いており、実際コンクールについて書かれたページは僅か8ページに留まっています。

前大会(2010年)では、2011年1月号で多くのページに渡る特集が組まれていただけに、今回はどうしてしまったのでしょうか…?(前回の特集記事についてはコチラの記事をご覧ください)

サラサーテ、月間ショパンともに審査員のコメントが載せられていますが、Seong-Jin Choさんに酷評をつけたPHILIPPE ENTREMONT氏の言葉が載っていないのは残念です。

Seong-Jin Choさん酷評の理由はオーケストラにある?

どの年も、1位入賞者を賞賛する声がある一方で、多くの酷評が聞かれるのは毎度の事ですが、私もその一人です。確かに彼の卓越した実力は、(特にポロネーズの演奏で)今回まざまざと見せ付けられましたが、しかしそれはWinner’s Concertでの話。肝心のコンクールにおける彼の演奏は「第1位」に相応しいものだったかというと、私はそうでないと考えています。

 

彼のFinaleの演奏は、左手の音があまり聴こえず、音全体に重さが乗っていない印象で、それが主張の弱さを露呈している様に感じました。これはYou-Tubeで鑑賞した1次予選から見られた傾向で、根本的な問題から、彼の入賞は有り得ないと思っていました。

 

しかし彼のコメントには、「FinaleとWiner’s Concertとでは自分の演奏は全く変わっていない、変わったのはオケの方だ」との記載がありました。彼曰く、Finaleではオケの音が大き過ぎたのだとか。同じようなコメントは、アルゲリッチ氏など他の審査員からも読み取る事が出来ます。

確かに、Seong-Jin ChoさんのFinaleの演奏におけるオケとの調和は、多くの部分で合っていないと感じていましたので、これがオケのせいだというのは一理あるのでしょう。それならば、評価対象者以外の第3者が絡む協奏曲においては、真っ当な評価を確実に行うのは難しいという事になります。

Finaleの得点の有効性

しかし結局は、Finaleの得点がそのまま実際のPrizeに繋がっている事は事実ですし、ルール上全ラウンドの演奏が加味されるというのであれば、尚更もっと良い演奏をしたコンテスタントは他にも居たと思います。それならば、少なくともCharles Richard-HamelinさんよりSeong-Jin Choさんに高得点がつく事はまず考えられませんし、小林愛実さんの入賞も十分有り得たはずです。

ちょっと長くなりましたので、次回に続けたいと思います。次回、Charles Richard-Hamelinさんへの高評価や、1位と2位の差などについて、考えて行きたいと思います。

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