10月2日、世界最高峰の実力者が集うショパン国際ピアノコンクール2021が遂にスタート!コロナ騒動の影響でワルシャワへ行く事は叶いませんでしたが、公式YouTubeチャンネルで生中継されるので、自宅に居ながら臨場感のあるライブ演奏を楽しむ事が出来ます。
今回は、私が6年前の前大会(2015年)の時にポーランドのワルシャワへ行って生の演奏を聴いた経験を元に、当時の写真を交えて会場の音響や審査基準などについてお伝えしたいと思います。
目次
会場はワルシャワの国立フィルハーモニー
ショパン国際ピアノコンクールの会場は、ポーランドの首都ワルシャワにある「ナショナルフィルハーモニー」。ワルシャワフィルハーモニー管弦楽団の本拠地ともなっているコンサートホールで、予選から決勝まで全てここで審査が行われます。
ポーランド随一のコンサートホールですが、私が訪れた2015年の頃はかなり年季が入っていて、お世辞にも綺麗なホールとは言えない感じでした。このすぐ近くにあるオペラハウスも同様にオンボロだったので、行政があまりこういう事に金を掛けない国なのかもしれません。
会場内の音響もそれほど良いものではなく、1階席はどの場所で聴いても音が天井に抜けてしまって音の輪郭がぼやけます。こういう所の音響は2階席の方が良い場合が多いですが、それにしても世界トップのピアノコンクールがこんな環境で行われているとは、ちょっと信じられないですね…。
客席からの眺望や音響については、こちらのページも合わせてご覧ください→【ワルシャワ・フィルハーモニーホール】で良い座席はどこ?
しかしネットで配信される映像の音声はなかなか優れていて、ライヴストリーミングながら音の粒や輪郭までしっかり分かる程のクォリティ!恐らく相当良い機材を使っているのかもしれません。
受信側の環境にもよりますが、ライブで観るよりこっちの方が良いかも?カメラワークも良いので、臨場感あるライブ映像を楽しむ事が出来ます。
課題曲の概要とステップ
今回のショパン国際コンクールは、予備予選を勝ち抜いた87名のコンテスタントで争われ、Stage 1~Stage 3の3つの予選と決勝の4段階で審査。ステージが上がるごとに人数が徐々に絞られてきます。
- 1次予選:87名
- 2次予選:約40名
- 3次予選:約20名
- 決勝:約10名
ショパンコンクールの課題曲は、その他のコンクールと違って全てショパンプログラム。課題曲は公式HPで参照出来ますが、アクセスに時間が掛かるのでコチラにPDFでまとめました。
細かい指定は色々とありますが、日本語でざっくり概略すると次の通り。
1次予選
- 特定のエチュードから2曲
- 特定のノクターン(一部エチュード含む)から1曲
- バラード・スケルツォ・舟歌・幻想曲の中から1曲
2次予選
- バラード・スケルツォ・舟歌・幻想曲・幻想ポロネーズから1曲
- 特定のワルツから1曲
- 特定のポロネーズから1曲
- その他、任意のショパンプログラム(総演奏時間30~40分以内)
3次予選
- 2つのソナタから1曲、又は24のプレリュード全曲
- 組曲形式のマズルカから1曲
- その他、任意のショパンプログラム(総演奏時間45~55分以内)
決勝
- 2つのピアノ協奏曲から1曲
各演奏者の日程やプログラムは公式HPのCompetitiorsタブから参照できます。
演目は予選から決勝まで予め全て決まっている
ショパンコンクールの課題曲は1次予選から決勝まで一人10曲以上、演奏時間にしておよそ150分ものプログラムをこなす必要がありますが、誰がどの曲を弾くかは最初のエントリーの時点で決勝分まで予め全て決まっています。
これは前大会の時に会場で購入したプログラムですが、各演奏者のプロフィールには予選から決勝まで予め全ての演目が記載。つまり、例え1次予選で姿を消す人でも、決勝の協奏曲まで既に弾ける準備が出来ているという訳です。
私なんか大学院の試験で課された40分のプログラムでも悲鳴を上げていたのに…(泣)。これを鑑みるだけでも彼らが相当な実力者である事が分かりますね。
最も面白いのは「2次予選」
1次予選から超一流の演奏が聴けるショパンコンクールですが、前回聴いていて最も面白いと感じたのは2次予選。
コンクールと言えば決勝ばかりが注目されがちですが、ショパンコンクールの決勝はショパンPf協奏曲のみ(しかも殆どの人が1番を弾く)なのでつまらないですし、3次予選は曲の種類こそ多いものの価値観(入賞しやすい演奏)が固定化してくるので、面白味に欠けます。
一方1次予選は個性豊かな演奏が聴けるものの、曲目のバラエティが少ないのが難点。その点2次予選は、演奏者の個性と曲目のバラエティの双方に魅力があっておススメです!ソナタや協奏曲が目当てではなく、ショパンの小品を沢山聴きたいという方は、2次予選に照準を合わせると良いでしょう。
審査基準はちょっと特殊?
私はこれまでショパン以外にもチャイコフスキー国際コンクールやジュネーヴ国際コンクール等も現地で生のライブを聴いてきましたが、ショパンコンクールの審査基準はその他のコンクールと比べると少し特殊である様な気がします。
と言うのも、例えば前回優勝した韓国のチョ・ソンジンの場合、決勝の演奏は全くと言って言い程オーケストラと噛み合わず、数ある批評家から酷評を受けながらも結果的に第1位を獲得。
審査員の講評では「オーケストラが悪い」という意見が多数でしたが、そういう問題なのか?私も会場で聴いていましたが、決勝で演奏した10名中ダントツの最下位を付けた程、良い演奏ではなかったです。
ただ、チョ・ソンジンがピカイチの実力を持っている事は確かで、その2日後に行われた入賞者コンサートで披露した英雄ポロネーズを聴きましたが、構成力、カリスマ性、安定感、どれをとっても文句無しの完璧な演奏!
いまだかつてこんな秀逸な演奏には巡り合えた事が無い位、間違いなく私がこれまで聴いた中でダントツに素晴らしい演奏でした。
この演奏を聴くと、確かに決勝の演奏はオケが悪かったのか?と思ってしまいますが、優秀なプレーヤーはいかなる環境でも最高の演奏が求められる訳で、それを鑑みるとショパンコンクールの審査基準は決勝の演奏だけでなく1次~3次の演奏、また過去の受賞暦やプロフィールなど、総合的に判断されているとしか思えません。
それでは決勝をやる意味があるのか?そんな腑に落ちない結果に終わったのが前大会。今回はどの様な評価が下されるのか?その点にも注目して観ていきたいと思います。
1次予選開始は10/3 日本時刻17時~
と言う訳で、日本人の若手実力者も多く出場するショパンコンクール。前回決勝まで進んだ小林愛実さんをはじめ、聴き所満載です!
最後に、ショパン国際コンクール2021の全日程を下記に載せておきます(時刻は全て日本時間)。
- 10/2…過去の受賞者等による演奏会(27:00~)
- 10/3~7…一次予選(17:00~、24:00~)
- 10/9~12…二次予選(17:00~、24:00~)
- 10/14~16…三次予選(17:00~、24:00~)
- 10/18~20…決勝(25:00~)
- 10/21~23…入賞者演奏会
ショパンコンクールYouTubeチャンネルはコチラ