今日で3日目となる「ショパン国際ピアノコンクール2015」は、連日熱い戦いが繰り広げられています。
ここまでの感想を申しますと、ハイレベルな戦いでありながら、機械の様なメカニック、妙妙たる表現力、物怖じしない精神を持ち合わせ、尚且つ最後まで集中力を欠く事なく演奏を終える参加者は、やはり限られていると感じました。
そんな中、昨日演奏されたギリシャ出身のAlexia Mouzaさんの演奏は圧巻で、Etude Op.10-4を完璧なタッチのもと目にも留まらぬ速さで演奏し、その後のEtudeもScherzoも多彩な音色の弾き分けと安定感で、聴衆を魅了しました。これまでの所、彼女の演奏がひとつ抜きん出ている様に思います。
さて、各位の演奏と共に気になるのが、ピアノの“選択”です。やはり今回もYAMAHAとSTEINWAYばかりで、KAWAIは少数派、FAZIOLIは殆ど見られません。
特にFAZIOLIについては私も弾いた事が無く、タッチや音色について謎ばかりなのですが、ライブストリーミングの映像では、マイクの位置等で音が変わる為、スピーカーから出てくる音をFAZIOLIの音色として判断するには無理があります。FAZIOLIの選択者が、私がワルシャワを訪れるFinaleでも残っている事を願うばかりです。
KAWAI、FAZIOLI前回(2010年大会)の使用状況
前大会で1stステージからFinaleまでに1度でもKAWAIを選択した事があるのは81名中10名、しかしその全員が2ndステージまでで姿を消しています。一方FAZIOLIは4名、内2名が入賞という輝かしい成績ですが、第5位のFrancois DumontさんはFinaleでSTEINWAYに変更しています。これを鑑みますと、残念ながら「KAWAIは不利だ」と判断されてしまっているかもしれません。またFAZIOLIに関しては、前大会が初という事でまだまだデータが少なく、その輝かしい成績はあるものの、今は人柱が立つのを待っている状況なのでしょう。この功績が今大会でも立証されれば、次回からは更に選択者も増えるのではないかと思います。
KAWAIはどの様なピアノか?
私が大学生の頃、いつも利用する練習室の一室にKAWAIのグランドピアノ(型番は忘れました)が置いてありましたが、学生内では不評で、いつもその部屋だけ空いていました。たまに弾いてみると、その硬いタッチになかなか音が鳴ってくれず、音作りに苦戦しました。タッチと同様に音質も硬く、柔らかい音が出せません(演奏技術の問題でもあると思いますが)。所謂“ピアノと仲良くなれない”状態です。
流石に大学の練習室のピアノと、ショパンコンクールの「Shigeru Kawai 」とでは、その性能と調整具合を鑑みても比較にならないとは思いますが、少なくともスピーカーを通して聴いた印象では、私が大学で弾いた印象と大差が無く、「あっ、KAWAIの音だ」とすぐに分かる程でした。
言わずもがな、KAWAIのピアノが劣っているという事は決して無いでしょうから、恐らく“難しい”のだと思います。簡単に音が出ない、しかし弾きこなせた時には、想像を遥かに超える様な美音が聴こえてくるのではないでしょうか?日本のKAWAIだからこそ、ショパンコンクールで日本人に弾きこなしてもらい、Shigeru Kawai の真の音を聴かせてもらいたいと切に願っています。
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