ロシアで最も有名且つ威厳のある劇場として知られる「ボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)」。この劇場には「Historic Stage」と「New Stage」の2つのステージがあって、それぞれ別棟の独立した劇場になっています。
今回はその内のNew Stageの方で≪La Sylphide≫を鑑賞しましたが、流石ロシアにおける名の通ったホールという事もあって、気品のある洗練された内装はGood!
しかし肝心のバレエの方は、ダンスも音楽もビックリする程ヘタクソ!これがあの“ボリショイ”なのかと思わず目と耳を疑った、そんな内容の公演でした…。
目次
もう一つのボリショイ劇場
今回バレエ観賞に訪れた「ボリショイ劇場」があるのは、ロシア・モスクワの中心部。赤の広場から北へおよそ500mの所にあります。
噴水のある広場の前に堂々と佇むのが、1825年に建てられたHistoric Stageの建物。2150席ものキャパを持つ巨大な劇場で、いわゆる“ボリショイ劇場”とはこちらの劇場を指します。
そんなHistoric Stageを横目に、今回訪れたのはその隣に建つNew Stageの劇場。Historicの建物に向かって左側にある階段を上り、その左側にあるクリーム色の建物がNew Stageです。
このボリショイ劇場New Stageの竣工は2002年。2005年~2011年まで大規模修繕工事が行われたHistoric Stageの代替劇場として建てられたのだとか。
本当はHistoricの方で鑑賞したかったのですが、残念ながら今回は公演日程が合わずに断念…。
チケット購入は公式HPから
尚、今回のチケットはボリショイ劇場の公式HPから購入しました。New StageもHistoric Stageと全く同じ要領・手順で購入できます。
HPは英語切替対応で、画面上部のグランドメニューの“What’s on”から任意の公演を選択。チケット購入にはアカウントの作成が必要ですが、名前とEメールアドレス、電話番号だけ記入すればOKなので楽チンです。
バーコード付きのEチケットが発行されるので、それを持って当日そのまま劇場へ向かえばOK!
ただ、今回はチケットを印刷せずにスマホPDFを入れて持参した所、そのままでは入れてもらえず、入口のすぐ側にあるチケットオフィスで実券への引き換えを命じられました。実券と言ってもA4の紙にチケット情報が印刷されただけのものなので、何故わざわざこんな面倒な事をさせられるのか不明です…。
エントランスロビーとBar
さて、中へ入るとエントランスロビーがあり、ここにはトイレやクローク等があります。
プログラムも販売されていて、価格は300RUB。100ページにもおよぶ立派な冊子ですが、中身は殆どロシア語表記のみです。
客席およびホワイエは上階にあるのですが、このエントランスロビーの奥には結構広めのBarがあって、ここがメインの社交場になっている模様。カウンターが幾つもあるので、休憩時間でもそれほど目だった混雑はありませんでした。
メニューはアルコール中心で、シャンパンが複数銘柄用意されているなど種類はとても豊富!シャンパンは、空港ラウンジでもお馴染み「モエシャン」がイエローとピンクの2種類、それに「ヴーヴクリコ」もあって、価格はそれぞれ150mlグラスで2100RUB。
「ドンペリ」もある様ですが、グラスでの提供は無く、24000RUBでボトルを空ける必要がある様です。
気品ある内装のホワイエ
階段を上って上階へ行くと、客席へ通じるホワイエがあります。天井から垂れ下がるシャンデリアがなかなかオシャレ!なかなか優雅な雰囲気の空間です。
煌びやかさというよりも、引き閉まった品格のあるインテリア。21世紀になって建てられた劇場とは思えないほど、歴史的な風格が漂っていますね。間口は狭いですが、上階まで吹き抜けになっているので開放感があります。
ホワイエの一角にはBarもありますが、客席から近い事もあって休憩時間中は大混雑!少し面倒でも、Barの利用なら先ほどのメインのBarへ行った方が良さそうです。
キャパシティ1000の客席
開演時刻の15分前、漸く客席への入場が開始されました!
このNew Stageのキャパシティはおよそ1000席。2千席以上あるHistoricと比べると半分にも満たない小じんまりとした劇場ですが、それでも2階層のバルコニーを持つ立派な造り!
ホワイエと同様、こちらも新しい建物とは思えないほど重厚感があって、なかなかステキな劇場です!バルコニーの両サイドは、ボックス状ではなく一続きのフロアになっています。
歴史的な風格の漂う講堂ですが、天井に描かれた絵画が宗教的なものではない所を見ると、ここが21世紀に建てられたホールだという事を実感します。キリスト一色のフレスコ画も良いですが、こういった躍動感のある絵画の方が華があって良いかもしれません。
1階平土間席の眺望は…?
因みに、今回の私の席は平土間の13列目。後ろから2番目のかなり後方の席ですが、小じんまりとした劇場の為か、ステージまでの距離は丁度良い感じ!音響も良く、オケピットの音がバルコニーの壁に反響してよく飛んで来ます。
シートに関しては、クッション性は良いものの肘掛が異様に高く、またシート幅がそれほど広く無いので、座り心地はイマイチ。
前後のシート配置は互い違いになっていないものの、前後の列の傾斜が比較的大きく、また今回は左端の方の席だったので、ちょうど前の人の頭の隙間からステージが良く見えました!そう考えると、逆に後方の席の場合はあまり中央の方へ行かない方か良いかもしれません。
驚くほど下手なバレエと音楽…
さてさて、今回の演目は≪ラ・シルフィード≫。J.M.Schneitzhoefferという日本では殆ど知られていないフランスの作曲家による作品ですが、このバレエ作品自体は非常に有名で、日本でもよく公演が行われているのを見かけます。
ボリショイ劇場で観るバレエという事で、さぞ質の高いパフォーマンスが観られると思いきや、これがビックリする程ヘタクソ!動きは揃っていないし、役柄の付いたソリスト達もふらついてばかりで安定感が無く、何だか学際の演劇を見ているかの様…。
オケの演奏も酷いもので、木管は音が全く出ていないし、特にObやClは楽器を吹き始めの高校生の様な演奏です。これでよくボリショイの名のステージに出られたものだなぁと、ただただ呆れるばかり…。
流石にこの散々振りは素人にも分かるのか、カーテンコールの拍手も超まばら!特にコストを掛けてここまで来ている外国人観光客にとっては、こんなもの見せられた日にゃ落胆といったら無いでしょう。
私にとっても、これまで観てきた海外公演の中で文句ナシ最低の演奏でした。
優秀な演奏家はウィーンへ?
と言う訳で、良い演奏には恵まれなかったものの、New Stageの建物自体はなかなか見応えのある美しい劇場だったので、来た甲斐はあったかと。Historic Stageも含めて、諸外国よりも低廉な価格でチケットが手に入るので、気軽に鑑賞できるのは良いですね。
今回の公演だけで判断するのは難しいですが、ダンスや演奏の質を求めるなら初めからチケット代の高いウィーンへ行った方が早いかもしれません。サンクトペテルブルクのミハイロフスキー劇場もそうでしたが、物価の安いロシアにおいて、優秀な演奏者はコストが掛かりすぎて維持できないのかも…?
これ以外のバレエ・オペラ劇場については、特集「世界のオペラ座・コンサートホール」をご覧下さい。
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