ネットサーフィンをしていたところ、“GVIDO”という電子ペーパー型のデジタル楽譜端末を見つけました。これは2016年6月、東京・品川にある「テラダ・ミュージック・スコア株式会社」という会社が発表した製品で、電子楽譜ながら紙の楽譜と同じ様な使い勝手で使用する事が出来るのだとか。
ちょっと聞いた事の無い様な会社の製品ですが、どの様な製品なのでしょうか?コンセプト映像と共に、その実力を探っていきたいと思います。
GVIDOの実力とは?
GVIDOは、PDFで保存した楽譜を紙の楽譜と同じ様に見開きで見る事が出来る電子端末です。
また、端末の右端をタッチすると簡単に次のページへとジャンプするので、演奏中の譜めくりにも困る事はありません。電子書籍が普及してきた時代に、遂に楽譜にもその流れが来たのかと思いましたが、果たしてその使い勝手はどれ程のものなのでしょうか?
GVIDOのメリット
この電子楽譜を使用する上でのメリットを考えると、おおよそ次のものが挙げられます。
- 演奏会で譜めくりが要らない
演奏会本番での譜めくりは、演奏者にとって悩みの種の一つでもありますよね。特に大譜表の楽譜を使用するピアニストは自ずと譜めくりの機会も多く、譜めくりする人を横に座らせる場合も多いですが、それだと演奏に集中できないですし、中には譜めくりを最小限にすべくコピー譜を工夫して繋げている人もいますが、これだと見栄えが良く有りません…。
しかしこのGVIDOは、端末の端をタッチするだけで次のページへ切り替わるので、これらの心配は皆無です。紙のように折れ曲がったり風で飛んだりしないので、楽譜の置き場所や演奏場所も選びませんね。
- 大量の楽譜も嵩張らない
私も音大生の頃は、40分のプログラム演奏の為に楽譜を何冊も持ち運ぶ機会もありましたが、毎回重くて大変(特にヘンレ版のベートーヴェンソナタなど…)。特に曲集の中の1曲を演奏する場合でも、無駄に重たい冊子を持ち歩く必要がありました。しかしGVIDOなら650gの端末を持ち歩くだけで済むので、そんなストレスからも開放されますね。
- 楽譜への書き込みが可能
これがGVIDO最大の特徴ですね。楽譜への書き込みは、特に学習者にとっては生涯の糧に繋がるものですし、プロにとっても共奏者とのリハーサル内容を記録する大切なプロセスなので、この機能は必須です。
これまでのタブレット端末でも専用のソフトさえあれば不可能ではない気もしますが、使い勝手などの面からハードルは高いと思います。これを紙の楽譜と同じ様に見開きの画面で使用できるとあれば、文句ありません。
GVIDOのデメリット
メリットと同時に、GVIDOを使う上でのデメリットを考えてみました。
- デバイス本体の価格が高い
やはり先ずは導入コスト。GVIDOの価格に関しては12万円程度になる模様ですが、この価格であればかなりハイスペックなタブレットが買えてしまいますね。また同時に、3,000円の楽譜が40冊買える値段でもあるので、その分をアナリーゼの為の楽譜購入に費やしたいと思う方も多いと思います。
- 楽譜データ収集までのプロセス
これまで紙の楽譜でやってきた音楽家がこの電子楽譜へ移行する場合、まずはこれまでに集めた楽譜をデータ化する事から始めなくてはなりません。そこには生涯に渡って蓄積された書き込みもありますから、新たな楽譜データを購入するわけにもゆかず、これはかなりの手間になると思います。
また、このGVIDOが普及すれば出版譜各社から対応のデータが発売されるものと思いますが、国内から海外に至るまであらゆる出版譜がこれに対応するまでに何年かかるのか…。中には楽譜の電子化に前向きでない出版社もあると思いますから、その様な出版社の楽譜を使う場合はGVIDOと両方持ち歩く必要が出てきます。GVIDO一本で活動できるまでには、相当な年月がかかるのではないでしょうか?
- データが消えたらアウト!
これは言わずもがな、デジタル時代の宿命ですよね。バックアップを取れば良いという意見もありますが、そのバックアップを入れたmicroSDを紛失したり、またはGVIDOを使う事を前提に本番を迎えたもののデバイスの予期せぬ不具合や故障で起動しなくなったりと…。その為に予備で紙の楽譜を持ち歩く様では本末転倒ですし、まだまだ課題はありそうです。
しばらくは様子見が無難?
メリットやデメリットを挙げると切りが無いですが、実際のレスポンスは使ってみないと分からない部分も多いですし、電子楽譜が普及すれば次第に価格も下がって来るものですから、しばらくは様子見が良いと思います。もしかしたら、今後他にもっと良いデバイスが出て来る可能性もありますからね。演奏会本番でのスマートな譜めくりの他、国際楽譜ライブラリープロジェクトIMSLPからDLしてすぐに見れるという点でもこのGVIDOは優れていると思いますので、私もいずれは導入を検討する時期が来ると思います。いずれにせよ、これにて楽譜産業が衰退しないことを願うばかりです…。
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