一昔前まで、楽譜を書く作業というのは非常に大変なものでした。今ではFinaleやSibeliusで手軽に書ける様になりましたが、それでも“入力するだけ”で終わらせてしまうと、何とも味け無い楽譜に、また見難い箇所も出てくるのではないかと思います。
そこで、楽譜出版社勤務の経験を生かして、美しい楽譜を書く為のポイントを幾つかご紹介したいと思います。今回は“付点の位置”についてお伝えします。
重声部における音符の“付点の位置”の基本
1つの五線に2つの声部を入力する際、Finaleでは“上声部をレイヤー1、下声部をレイヤー2”で入力すると、大概上手い具合に付点が自動的に配置されるのですが、これを逆に入力した場合や、レイヤー3或いは4を使用した場合等、最適な配置とはならない場合があります。また、上下声部の音程が2度以下である場合、それぞれの音符同士が重なってしまい、それを離すにも最適な距離が分からずに困る事があります。
特にややこしいのが、線にある音符に付く付点の位置でしょう。上下声部で重なると、付点音符がどちらの声部のものなのか、分からなくなってしまいがちです。
先ず、基本となる位置は次の通りです。
- 上声部の付点の位置と下声部の付点の位置
線上の音符に付く付点の位置は、上声部(単一声部)の場合は上の“間”、下声部の場合は下の“間”という事になります。ここまでは大方問題無いかと思います。
次に、上下の声部で音程が重なる場合の配置です。
これはどちらの声部に付点が付いているか分かりますか?正解は下声部です。
付点が音符の示す音程の下の“間”に付いている事で、下の声部である事が一目で分かります。 また、2度で重なる音符の配置は「上声部が左側、下声部が右側」これが基本となります。更に、同音程で重なる音符同士の間にスペースを入れる事も重要です。
重声部の付点音符の配置
上声部は普通に付点を付け、同一音程の場合は少し距離を取って下声部を配置します。Finaleでは「道具箱ツール」を利用して、音符を左右に動かして調整します。
- 下声部に付点音符がある場合の配置
下声部における付点位置の基本を踏襲した上で、こちらも同様に音符間を少し空けます。
2度音程の場合は空ける必要はありません。 - 上下両方の声部に付点音符がある場合の配置
2度で重なる場合は、上下の付点位置を揃えます。1度の場合は、これまで通り音符間を空けて、下声部の音符が上声部の付点を干渉しない様にします。
また同一音程かつ同一音価の場合は、玉を重ねて一つ音符にし、棒を上下に付けます。
まとめ
- 下声部における、線にある付点音符の付点は線の下(下の“間”)
- 2度で重なる音符の配置は「上声部が左側/下声部が右側」
- 1度で重なる場合は音符間を空ける
- 上下共に付点音符の場合は付点を一直線に揃える
如何でしたでしょうか?現代音楽等では、この「基本」だけでは書けない複雑な書き方が必要な場合もありますが、難解な楽譜はもはや音楽の為ではなく“絵画”的な意味合いも強くなってきます。
手書きならではの良さもあり、中にはそれを謳った作曲コンクールもある様で、なかなか奥が深いものです→“手書き”の楽譜しか受け付けない作曲コンクールに思う事