オーストリア・グラーツにも、ウィーンと同じ「楽友協会」という名のコンサートホール“Musikverein Graz”がありますが、今回はこの楽友協会のホール「STEFANIEN-SAAL」での鑑賞記をお伝えします!
オーストリアらしい落ち着いた雰囲気ながらも、金の装飾とシャンデリアが織り成す美しいコンサートホールでの鑑賞は、日本ではなかなか味わえないひと時ですよね。今回は、チケットの買い方から会場アクセス、客席の眺望など全貌を見ていきたいと思います。
目次
チケットの購入はWebサイトから
海外で行われるコンサートチケットは、その殆どがWebサイトから購入可能ですが、それはこのグラーツ楽友協会も同じ。今回のコンサートチケットも、同HPから購入する事が出来ます。
ただ、ウィーン楽友協会HPとは違って英語に対応していないので、ちょっと分かり難いかもしれません。トップページのグランドメニューから“KONZERTE”をクリックするとコンサートスケジュールが表示されるので、後はGoogle翻訳を併用しながら進めてゆけば決済まで辿り着けるかと思います。
今回鑑賞するのは、グラーツ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会。チケット価格は1stカテゴリーで€72と、ウィーンフィル定期演奏会より少し安い程度ですが、60%~100%のマージンがかかるウィーンフィルと比べると半額以下で手に入る計算ですね。
クレジットカード(VISA or Master)で決済後、送られて来るメールを印刷して、公演当日ボックスオフィスで実券に引き換えとなります。私の持っているJALカードで問題なく決済する事が出来ました。
会場アクセス・チケットオフィス・クローク
グラーツ楽友協会の場所は、グラーツ旧市街の中央広場のすぐ近くです。広場の南側、グラーツ市庁舎の隣のブロックが楽友協会の建物になります。
ただ、入口がある所は広場とは裏手になるので、建物をぐるっと周って来る必要があります。間口の大きなエントランスがある訳では無いので、ちょっと入る所に迷ってしまいました…。
中へ入るとエントランスホール。赤い絨毯の先にはホワイエに通じる大階段がありますが、先ずは左側にあるボックスオフィスでチケットに引き換え。
チケットは、丁寧にも封筒入り!係員の対応も素晴らしく親切でしたし、なかなか好感の持てる対応でした!尚、ここにはクロークもあって、コートやバッグを預ける必要がありますが、チップは€1.5とやや高めです。
大階段とホワイエ
赤絨毯の敷かれた大階段を上がると、ホワイエに通じます。階段の途中で売られていたプログラムを購入したのですが、お釣りを間違われる等の混乱があって、価格を確認出来ませんでした…。恐らく€5程度かと思われます。
階段を上がるとホワイエ。エントランスホールから続く吹き抜けを囲む様な構造、クリーム色を基調とする落ち着いた色の内壁と、所々に施された金の装飾が美しいですが、ウィーン国立オペラ座なんかと比べると規模が小さく、圧倒される様な豪華さは感じられませんね。
でも、休憩時間には身動きすら取れなくなるウィーン楽友協会のホワイエと比べたら、遥かに広いかもしれません(参考→ウィーン楽友協会/バレンボイム&アルゲリッチ鑑賞記!黄金のホールを詳しくレポート!)。ここにある各扉から、客席へと繋がっています。
このホワイエの一角にはBarコーナーもあります。メニューはワイン・アルコール類の他、軽食は簡単なサンドイッチが数種あるのみです。
“ステファニー・ザール”
客席の扉が開いて開場となったのは、開演の30分前。グラーツ楽友協会のコンサートホールは、STEFANIEN-SAAL(ステファニーザール)という名前が付いています。
ホールは直方体のシューボックス型。キャパシティは1,100とやや小ぶりですが、ウィーン楽友協会の大ホール(グローサー・ザール)とよく似た形をしていますよね。この事から、同ホールの弟分として位置づけられているのだとか。
建設は1905年~1908年という事で、およそ110年の歴史を持つこのホール。席は1階席の他2階バルコニー、更に中央にはその上に3階ガレリアまであります。
天井に近い壁際には、計14体の歴史的作曲家の肖像が飾られていますが、この内F.メンデルスゾーンに限っては、彼がユダヤ人であるが故、ナチス時代には一旦剥ぎ取られてしまった経緯があるらしい。1956年に復元されたそうですが、彼への迫害はこういう所にも及んでいたんですね。2階部分の張り出しが気になる1階席
今回は2階席をアサインしましたが、先ずは1階席を色々と見て周りたいと思います。1階席の平土間は、シートが前後でずれていない点はウィーンと遜色無いですが、最後尾まで一切段差が付いていない為、自身の前方に大柄な人が座ると眺望はかなり制限されるでしょう。
また、列の両端2席分は上に1階席部分の張り出しがあって、しかもこれがあまり高さが無い事から、かなり重々しく感じてしまいます。こういう席だと大概天井に抜ける音が聴こえ難くなるので、あまり端の方の席は選ばない方が無難かと。
壁際には補助席の様なシートが付いていますが、これでも立派な客席です。カテゴリーを見ると2~4となっていたので、眺望に関しては場所によってそれ程悪く無いのかもしれません。
最後列の後ろは立ち席となっていますが、この日の公演では誰も利用しておらず…。ウィーンとは違い、よほど人気の公演でない限りここが埋まる事は無さそうです。
2階席の眺望
今回私が指定したのは、2階中央のバルコニー。ここは先頭列が1カテゴリーで、後ろへ行くに従って1列ずつカテゴリーが下がっていく仕様になっています。
私は1stなので先頭列の席ですが、眺望は最高!シューボックス型のホールとは言え、キャパ1,100と規模のあまり大きくないホールが故、ステージまでの距離がそれほど遠くないのが良い所。
ただし、足元がすごく狭いのがちょっと難点…。椅子に深く腰掛けても、あと3cm程で膝が前の壁についてしまうくらいです。大柄な人は、避けた方が良いかもしれませんね。
ちょっとイマイチな演奏…
- Myroslav Skoryk/Huzulisches Triptychon
- J.Brahms/Vn. Konzert in D-Dur
- C.Debussy/La mer, 3 Symphonische Skizzen
- M.Ravel/La Valse
さて、今回のプログラムは上記の通り。ミロスラフ・スコリクという現代作曲家の序曲から始まり、協奏曲はブラームスの有名なD-Dur、休憩を挟んでドビュッシーの「海」とラヴェルの「ラ・ヴァルス」、〆て2時間弱の内容です。
グラーツフィルの演奏は、う~んちょっとイマイチ。出だしの音はよくずれるし、金管がプスる事もしばしば。またフォルテになった時でも奏者によって音質がバラけることがあり、統一感に欠けます。
指揮者はOksana Lynivというウクライナ出身の若手(40歳)女性指揮者。今回だけではなく、今期(2017~2018)には他にも彼女出演の公演がある様ですが、和声の違いによる音の差がはっきりせず、あまり演奏者をまとめきれていない印象です。
また、ソリストはEmmanuel Tjeknavorianという地元オーストリアの若き(22歳)ヴァイオリニストですが、ソリストが凄く若い為かクソ真面目で特徴の無い演奏に感じました。テクニックは素晴らしいのですが、CDを聴いている様でとても眠くなります。彼はまだまだ将来有望な若手ですので、今後に期待したいですね。
服装と客層に見るオーストリアらしさ
と言う訳で、グラーツ楽友協会「ステファニー・ザール」でのコンサートの模様をお伝えしましたが、程よい広さと美しさを兼ね備えたホールでの鑑賞は、行って損は無いと思います。ウィーンに比べると演奏の質は落ちるのかもしれませんが、まぁそれに関しては時の運もありますし、一概には言えないかも?
尚、観客の服装に関してはウィーンと遜色無く、比較的“堅苦しい”格好をしていないと浮いてしまうかもしれません。ただ、若い人が殆ど居ない(皆50代以上)のも一つの原因かと。そういう意味では、クラシック音楽を嗜む人口は、日本もオーストリアもあまり変わらないのかもしれませんね。
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