シドニー・オペラハウスに続き、同じシドニー市内にあるコンサートホールCity Recital Hallで先日22日に行われた辻井伸行さんのリサイタルの模様をお伝えします。オペラハウスでは洗練された技術と芸術性の高い演奏で魅了してくれた辻井伸行さんですが、その演奏はソロ・リサイタルにおいても健在でした!
辻井伸行さんの演奏は然る事ながら、日本人にとってはちょっとマイナーなシティ・リサイタルホールについても、その会場や座席の様子など詳しく見ていこうと思います。
目次
City Recital Hallの場所とアクセス
シティ・リサイタルホールは、シドニーの街の中心部にあるクラシック音楽向けのコンサートホールですが、あまり…と言うか殆ど知られていないと思います。私も今回、辻井伸行さんのリサイタル情報を閲覧している時に始めて知りました。
場所はシドニー市街の中心部、オペラハウスからは1.5kmほど南に位置します。電車だと最寄の駅はWynyardとなりますが、T4のMartin Place駅からの方が歩行者専用道を歩いて行けるので便利かと思います。
地図で見ると分かると思いますが、ホールの入るビルはメインストリートから奥に入った細い路地にあるので、初めて訪れる時は結構分かり難いと思います。ホールエントランスも、ここがコンサートホールである事を殆ど感じさせない様な造りです。
チケットオフィスとロビー
中へ入るとすぐにチケットオフィスがあり、シドニーシンフォニーのWebサイトでチケットを購入した場合はここで実券に引換えをしますが、このCity Recital Hallのチケット手配については、シドニー・オペラハウスと同じくシドニー・オペラハウスのコンサートチケット購入と受取方法 の記事に記載していますので、併せてご覧下さい。
その先には、ちょっとしたロビーがあります。客席および社交場はこれより上階にあるので、ここは開場前に少し寛ぐ程度の意味合いの場所だと思いますが、それでもBarを備えた本格仕様!西洋人のグループが早くも会話に花を咲かせていました。尚、クロークもこのロビー内にあるので、大きな荷物があれば預けます(チップは不要)。
社交場とBarのメニュー
最初のロビーから階段を上がると、客席へ繋がるホワイエに入ります。こちらも開演30分前というのに、早くもワイングラスを持った人でいっぱい!
この階はホール客席の1階席に繋がるエリアで、社交場のメインとなっている為か、Barの仕様も本格的です。この後、休憩時間には超陀の列でしたが、開演前は行列は限定的。
ドリンクのメニューを見ると、スパークリングはイタリアの「ヴィラ・テレーザ・プロセッコ」やフランスの「アンリ・ル・ブラン」などのグラスが$12。いずれもボトルの市場価格は1,500円前後なので大したワインではありませんが、赤・白ワインも含めてシドニー・オペラハウスよりは若干安価に設定されています。
その他、ビールやソフトドリンク、また軽食としてサンドイッチもある様です。
水はここでも無料。プラスチックのコップが置いてあるので、自由に注いで飲む事が出来ます。
尚、Barは上階にもあって、2階席、3階席のホワイエにそれぞれBar2、Bar3が設置されていました。しかし何故か最上階のBar3は営業しておらず、その分人が少なめなので休憩時間にゆっくり過ごすには良いかもしれません。
プログラムは無料
シドニー・オペラハウスと同じく、ここでもプログラムは無料!1階席のホワイエの一角で、山積みになって置いてありました。開演前は係員がいて、一人一人手で配布しています。
仕様もオペラハウスで配布されたものと全く同じ。紙質も良く、ツルツルとした水をはじく材質です。30ページ弱の薄い冊子ではありますが、楽曲解説も念入りに書かれていて、今回のプログラムにはベートーヴェンの「熱情」が直筆譜入りで解説されている等、とても無料とは思えない内容です。
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1階席の眺望と座席の配列
それでは、客席の方へと入っていきたいと思います。今回、ここで初めてチケットチェックが行われました。
ホールの内装は、明るい色の木材と白の壁を基調としたシンプルな造り。日本のコンサートホールでもよく見られる色合いですよね。
客席は3階層。オペラハウスと比べると、このホールは小ホール的な存在ですが、それでもキャパシティは1238もあるというから驚き!日本で言うと、ちょっとした文化会館の大ホールくらいはあるという事になりますね。
天井も高い!この高さを見ると、やはりここがそこらの小ホールとは一線を画している事を実感します。
座席の配列は、日本にある小ホールの様な通路が2列のスタイルです。千を越えるキャパがあるのは、恐らく2階席3階席の数が圧倒的に多い為だと思われます。
座席幅、シートピッチ、座り心地も申し分無し!今回、前から10列目くらいのセンター寄りに座りましたが、ピアノと程よい距離があって残響を聴くには最適でした。演奏者の腕の動きはギリギリ見えるくらいですが、前後の席とは互い違いの配置なので、前の人の頭で隠れて見えなくなる心配は少ないでしょう。
3階席から会場全体を見渡してみる
途中の休憩時間に、最上階の3階席の方へ行ってみました!ここもオペラハウスと同じく、客席入口でのチケットチェックは休憩時間にはありません。
こうして見渡してみると、やはり1階席の数は小ホール程度。ステージの広さも小じんまりとしていますね。
その代わり、普通は3階席ともなると申し訳程度に座席が配置されているものですが、この部分だけで100席以上を数えるほど。“小ホール”でこれほど上に高い席では、残響がどの様に聴こえるのか気になるところです。
サイドのバルコニー席は座席に角度が付いていないので、満席の場合は前に乗り出さないと見え難いかもしれません。
歓喜に沸いた4回のアンコール!
辻井伸行さんの演奏については、この後の記事で詳しく語りたいと思いますが、それにしても本当に凄い!超絶技巧と美しい音色を持つ、正にパーフェクトな演奏で魅せてくれました。
- J.S.Bach / Italian Concerto BWV 971
- W.A.Mozart / Sonata in B flat major K570
- L.V.Beethoven / Sonata in C sharp minor Op.27-2
- L.V.Beethoven / Sonata in F minor Op.57
今回のプログラムは古典的な作品ばかり。出来ればショパンの様な流れる旋律の楽曲も聴きたかったというのが本音ですが、それに代わる様な「月光」の2楽章の美しさは格別!ロマン派に足を踏み入れるベートーヴェンの美しさが、これ程までに滲み出て演奏を聴いたのは初めてです。
アンコールは全部で4曲!1曲目演奏直前に、客席から「カンパネラ~」とリクエストの声が飛び、2曲目はそれに答えてリストのラ・カンパネラを演奏。本プロの「月光」と「熱情」であれだけ体力を使ったにも関わらず、あのカンパネラを超絶なテンポで弾くのだからスゴイ!流石にラストはテンポが速過ぎて音が付いていけてない感じもありましたが、音のミスは一切なし!神業ですね。オペラハウスでの協奏曲と同様、手が真っ赤になるまで拍手しましたよ!
海外で聴く“辻井伸行”
海外という特別な場所で辻井さんのヴィルトゥオーソな演奏を聴けたのは、とても幸せな時間だったと思います。私はいつも巷の噂はあまり信用しない様にしていますが、彼に対する高評価は本物、いやそれ以上に感じました。
彼はまだ20代という若さですから、これからどの様なピアニストに成長していくのか楽しみです。その点も踏まえて、次の記事では辻井伸行さんの演奏について語ってみたいと思います→ヴァン・クライバーンで優勝した辻井伸行さんの演奏を語る。
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