今回は、フランス・パリで訪れた楽譜店を2軒ご紹介したいと思います。
これまでに長年西洋クラシック音楽を演奏、研究してきた身としては、ヨーロッパの現地の楽譜店は“聖域”の様に感じていました。今回せっかくパリへ行くので、自分の好きな作曲家Francis Poulencの作品の中で、日本では手に入り難い楽譜が見つかったら良いなと思っていました。
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パリで楽譜店の集まる場所
パリの楽譜店について調べてみると、市内北西部にあるSanit-Lazare駅近く、Rome通り沿いに何軒か店舗がある事がわかりました。
私は近くを走る地下鉄3号線のEurope駅から向かいました。ここからなら出口を出てすぐRome通りに出る事が出来ます。
Rome通りはSanit-Lazare駅の西側を南北に走っている道路で、南に向かって下り坂になっています。
周辺を見渡すと、幾つもの楽器屋が軒を連ねている他、カフェも割りと多く見られます。
また、通りを歩いていると楽器を持った若い人の姿を良く目にしました。彼らの持っている楽器を見ても、ヴァイオリンやギター、管楽器まで多彩。ここは音楽家が集う街である事を物語っています。
LA FLUTE DE PAN
ここは楽器によって取り扱い店が3店舗に分かれており、この交差点にあるのはヴァイオリンやフルート等のオーケストラ楽器。
そこから北方面へ数十メートル進んだ所に、ピアノやオルガン等の鍵盤楽器、および声楽の楽譜を取り扱う店舗があります。
入口が閉ざされていてちょっと入るのに躊躇しましたが、他の人の出入りを確認。「ボンジュール」と挨拶をして中へ入ります。
店内はそれほど広くありませんが、2フロアに分かれています。日本の楽譜店と同じ様に、見たい楽譜を自分で手にとって閲覧する事が出来ました。
歌曲のフロア
最初のフロアは歌曲の楽譜が陳列されていました。その中でPoulencのコーナーを発見!さすがはフランス、ここへ来る前に訪れたロンドンの楽譜店に比べると、はるかに多くの作品が揃っています。
≪la Courte paille≫。プーランクはある意味“歌曲専門”とも言えるほど多くの歌を残した作曲家ですよね。管弦楽やピアノ作品を聴いていると、転換の早い細切れなフレーズばかり聴こえてきますが、歌曲には長いフレーズでしっとり歌う作品も多いです。
ちなみにプーランクの全作品は、このCD全集で聴く事が出来ます。かなりマイナーな作品から、プーランクの自演音源まで収録されているので、なかなか聴き応えあります。
その他、プーランク作品の作曲年やエピソード等が書かれた伝記が、3年程前に出版されました。それまでプーランクに関して書かれた日本語の書籍はそれほど多くなかったので、これはとても重要な資料に成り得るものだと思います。
ピアノ曲のフロア
続いて奥のフロアへ進んでゆきます。こちらにはピアノ譜が陳列されていました。
品揃えはそれなり…。ただ日本のYAMAHA銀座店と比べると、特に日本で人気の高いNikolai Kapustinの楽譜等のラインナップに関しては、若干貧弱だなと感じました。加えてPoulencの作品も、Durand版やSalabert版など日本でも買える出版社のものばかり。価格も大阪の「ササヤ書店」の方が安かったりします。と言う訳で収穫はなし…。ARIOSO
もう一つの店舗に行ってみます。今度は同じRome通り沿いにあるARIOSOです。
場所は、同じくEurope駅出口からRome通りに出て、今度は南方面へ数十メートル進みます。
青い軒が目印のARIOSO。店頭にはセール品と思われる楽譜が陳列してありました。
店内は天井も高い上に結構広々!まぁLA RLUTE DE PANに比べて、ここは全てのジャンルが一つの店舗に集約されているので当然なのかもしれませんが。
ピアノ譜のコーナーへ行ってみます。ラインナップとしては、先ほどと変わらない程度。PoulnecもKapustinもそれなりに揃っていますが、どれも日本で買えるもの。
そして驚くは日本の出版社の多さ。全音楽譜出版社や音楽之友社などの楽譜、またSalabert版の日本語訳版も陳列されていてビックリしました。
それだけ日本のマーケットが大きいという証拠なのかもしれませんが、その日本からはるばる楽譜を探し求めに来た身にとっては、ちょっと意気消沈です…。
一方、店内には地下へ通じる階段があり、地下にはオーケストラのスコアや弦楽器の楽譜が並べられていました。
日本のYAMAHA銀座店の様に“お洒落”な陳列というよりは“倉庫”といった感じで、マニアックなオケマンが夜な夜なココへ通って楽譜と格闘している姿が目に浮かびます。
何か日本では手に入らない掘り出し物が見つかるかと期待して訪れたパリの楽譜店、結局2店舗とも収穫が無かったのは残念です。品揃えに関しては若干貧弱に感じましたが、欲しい楽譜があればピンポイントで取り寄せてもらえば良いだけですので、現地の人は別に不自由しないのかもしれません。次回はロンドンの楽譜店をご紹介します。