私がポーランドのワルシャワ滞在中に訪れた「ポーランド国立歌劇場(Teatr Wielki-Opera Narodowa)」でのバレエ鑑賞レポートをお伝えしたいと思います。
私はこれまでウィーンやプラハにある国立歌劇場を訪れましたが、どれも豪華絢爛、休憩時間にはワイン片手に、紳士淑女の集う社交場を気分揚々と巡り歩きました。芸術の街ワルシャワのオペラ座にも、同じ期待をしない訳にはゆきません。どの様な世界が待っているのでしょうか?
立派な外観と質素な内装
概観は美しい白を基調とした西洋建築で、豪華な内装を期待させてくれます。
薄暗い入口から入ってみると…
あれっ?
豪華な装飾品や煌びやかな照明などは無く、美しい外観からは想像もつないほど質素な内装に唖然としました。建物内には開演1時間前から入れますが、客席への入場は30分前からとなりますので、それまで廊下の椅子に腰掛けて待つ事にします。
プログラム販売員の対応が酷い
同じフロアにはプログラムが販売されていました。本日の演目は、モーツァルトの《Casanova》、なかなかしっかりとした冊子で、そのお値段20PLNと結構します。
ところで、このプログラムの販売員(アルバイトと思われる若い女性)の態度が酷いものでした。2名の販売員同士、仕事中とは思えないほど砕けた態度で雑談、私が英語で「1つ下さい」とお金を差し出した所、物凄い形相と嫌な物を見る様な目で投げやりにプログラムを渡され、私の「Thank you」にも一切応じずに終始無言で、とても嫌な思いをしまいました。
ワルシャワのレストランでは、どこも心のこもった持て成しで迎えてくれましたので、こういった立場の人達もいるのかと思うと、とても残念です。
客席は市民会館レベル…
さて気を取り直して、開演30分前になりましたので、客席内へ入場します。
ここも残念ながら“市民会館”レベル。清掃が行き届いているので汚い印象は無いのですが、とにかく“古い”印象です。それも歴史的なアンティーク調の古さではなく、単に“使い古し”の感じで、趣がありません。
平土間の1階席の他、上層階は一応“円形”にはなっている様ですが、ウィーンの「バルコン」とは比較になりません。それでも、観客は一様に“お洒落”な装いで、一応「社交場」としての機能は果たしている模様です。男性はジャケットが基本で、カジュアルなファッションの人は殆ど見かけませんでした。
見ごたえのある舞台装飾
肝心の公演の中身ですが、ダンサーの腕前はイマイチといったところ。所々ミスを連発するなど、手足の先まで神経の行き届いた出演者は、ごく一部に限られました。しかし振り付けの内容と舞台装飾は、とても見ごたえのある物でした。特別に豪華という訳ではありませんが、あの吸い込まれそうな空間美は、ウィーンでも見られなかったもので、とても魅力的でした。オーケストラは、比較的広めのオーケストラピットに12型(1st Vn.が12本の編成)が入っており、しかもコントラバスが8台で、迫力のある低音部を持つ音楽が聴こえてきました。振付師はKrzysztof Pastor氏、指揮者はJakub Chrenowicz氏。
本当の“社交場”は上層階にあった
市民会館レベルの座席に意気消沈しつつも、休憩時間の際に館内を少し巡ってみました。
どうやらここがメインの社交場の様です。カウンターテーブル越しにワイン片手にお喋りと、私がウィーンやプラハで見た光景が広がっていました。
気になったのが、こちらの女性。なにやら客に配布しています。
ホワイエの美術展
ロビー内には美術品の展示もありました。そして、何より驚いたのが…
ロビーの一角に、何やらエントランスの様なものがあります。中に入ってみると、なんと美術展が行われていました。
この時はFranciszek Starowieyski氏の作品展。展示は幾つもの部屋にも渡っており、これだけでも一つの美術館が成立する程の大ボリューム。休憩時間中だけでは、その全てをじっくりと鑑賞する時間はありません。この様に、本家の観劇以外にも一緒に楽しめる本格的な展示があるというのは、驚きでした。
客席の改修を望む…
確かに、パリの様な大都市にあるオペラ座と比べると、その貧相な内装には気落ちすると思いますが、それでもこの街の人達の間では、お洒落をして出かける社交場としての機能を、きちんと果たしている様に見えました。
しかし「ショパン」を立てての“芸術の街”を目指すならば、せめてコンサートホールの改修を行うくらい力を注いでも良いのではと思います。ショパンコンクールの「フィルハーモニー」もそうですが、世界レベルの演奏家を迎えるホールとしては、あまりにも粗末なものではないでしょうか。地下鉄2号線の開業・延伸計画もあり、街を見渡せば超高層ビル建設ラッシュ、その脇には塗装の剥がれた肘掛シートのコンサートホール。強い経済発展の傍らで弱い芸術の立場、なんだか自分の国を見ている様な気持ちになりました。
以上、ポーランド国立歌劇場の鑑賞レポートをお伝えしました。
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