何かと話題のTPP(環太平洋パートナーシップ)協定ですが、小麦やお米の関税云々だけではなく、関係法律の整備として「著作権法」も改定されますね。これまで著作者の死後50年まで有効だった著作権の保続期間が、法改正により70年に延長されます。
私見としては、そもそも著作物の権利はその著作者本人に限ったものであって、例えその家族が恩恵を受けるにしても、死後50年間に渡って保障されるというのは、余りにも長すぎるのではないかと思っていました。それが、ディズニーをはじめとする莫大な著作物を所有するアメリカが“ブイブイ”ゴネたばかりに、70年という気の遠くなる様な長期間、著作権の“相続者”が恩恵を受ける仕組みになってしまいました。
“戦時加算”解消がせめてもの救い?
日本では、これまで著作権の保護期間は50年と定められていましたが、著作物によっては「戦時加算」によって10年延長されていました。これは、著作権保護期間に「太平洋戦争」の期間が含まれる場合、戦中に失われた著作者の権利を守る為に、延長期間が加算されるもので、その加算期間は最大で10年と5ヶ月(日本が参戦した1941年12月8日~サンフランシスコ平和条約締結の1952年4月27日の日数)にもおよびます。
でもこれ、その条約によって日本にだけに課されたものだった様で、それはオカシイと交渉の結果、今回のTPP協定によって「戦時加算」は解消される事になる模様です。まさか、日本だけ著作権保護期間が80年だなんて、あまりにもアンフェアですから、当然の事だと思います。これによって、これまで戦時加算されていた作品に関しては、+10年で済む様になりますね。
施行までに著作権切れすれば問題ない
TPPが大方合意に至ったとは言え、実際に70年ルールが施行されるのは、今から約2年後という事ですから、それまでに著作権切れとなった作品に関しては、どの様な扱いになるのか気になります。それについて、とある記事に出ていた例を見ると、1965年に亡くなった江戸川乱歩の作品は、50年ルールによって公開が可能になるが、70年ルールがこの先2年後辺りを目処に適用されるとなると、1967年に亡くなった山本周五郎の作品の公開は、さらに20年先延ばしになる可能性が高いという事です。
つまり、新制度施行までに現行の50年ルールによって著作権切れになった作品に関しては、70年ルール施行後も著作権が復活する事は無い、という認識で良いのだと思います。法改正間際になると、著作権保持者からの70ルール適用前倒し圧力が、激しさを増す事が予想されますね。
私も著作物を扱う者の一人として思うのですが、著作者本人の権利を守る事には異論は全く無いものの、その周囲の人間が生涯に渡って恩恵を賜る事については異議があります。何も創造していない者が“たなぼた”で左団扇というのは納得いきませんね。
今後も、著作権法について注視して行きたいと思っています。
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