NHK(Eテレ)亀田音楽専門学校Season3の放送、“J-pop業界の今”を語る番組は「J-popの崩壊」を伝えるのか?

一昨日の木曜日(1/7)よりNHK(Eテレ)で放送中の「亀田音楽専門学校Season3」では、1980年代から続くJ-popの歴史を紐解き、各々の時代にどの様な音楽が流行ったか等について詳しく解説しています。

今回は、この番組を通して日本のJpopは今後どの様な軌跡を歩んで行くのか?考えていきたいと思います。

J-popの歴史区分

「亀田音楽専門学校Season3」における計4回に渡る放送で、第1日目となる一昨日は、1988年より歌謡曲に変わって台頭したJ-pop誕生の真意について、ゲストの“いきものがかり”さん同席の元、解説が行われました。

  • 1988~1993 J-pop誕生の時代
  • 1994~1999 インパクトの時代
  • 2000~2005 文明開化の時代
  • 2006~今   J-popの現在、未来

番組では、J-popの歴史をこの様に区分けしており、歌謡曲からJ-popへの進化の裏づけを「短調から長調へ変化した事」および「多くの曲にBメロが加えられた事」としています。これについては何ら異議はないのですが、私がこの番組シリーズに期待する事は、近年のJ-popに対して警鐘を鳴らしてくれる事です。

ご承知の通り、オリコンのTopチャートにアイドルのダンスBGMがずらっと並ぶこのご時勢、古き良き時代を知っている方にとっては、何とも呆れ果てている事と思います。そして一番知りたいのは、現在(2016年)はどんな時代なのか、という事です。

注目すべきは第4回目の放送か

上記の時代区分のうち1988年~の区分けを見ると、各々の時代は6年ごとの区切りとなっている中、2006年~は区切りが無く、現在に至るまで「J-popの現在」という一つの括りになっています。これが何を意味するのか、真相は第4回目の放送を待つのみですが、ひょっとしたら巷で言われている“J-popの崩壊”について、何かコメントがあるかもしれません。

私も以前【いわゆる“現代音楽”の価値と、Jpopの再現芸術化について】の記事で「J-popは2000年代の前半で終焉し、以降は再現芸術への以降に入った」と述べましたが、握手券目当てのCD販売が社会問題として取り上げられる中で、定額聴き放題サービスの台頭など大量生産大量発信の時代に突入した事により、個々の芸術作品が軽視される時代になりました。

この問題を、NHKがきちんと認識しているか、そして少しでもそれを匂わす発言があるかどうか、注目してみたいと思います。

今後は“再現芸術”が主流になる?

クラシック音楽へ目を向けてみると、ベートーヴェンやハイドンの様に、世に出回ってから200年も経つ様な作品が、今日でも多く取り上げられいます。

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現在でも、特に映画やドラマなどで取り上げられた作品に関しては一時的に有名になりますが、それでも決して世の「主流」になる訳ではなく、往年のクラシック作品に押されて影を潜めてしまうものが殆どでしょう。

これも以前の記事で書きましたが、ルネッサンス時代から続いた西洋クラシック音楽は、20世紀初頭までに「西洋音楽史」として確立し、現在はその中の有名な曲を“演奏家”がコピーする「再現芸術」の時代になっています。

西洋音楽は、それこそ300年にわたって名曲が出されてきた訳ですから、別に新たなる曲が誕生しなくても、聴衆は星の数ほど存在する往年の名曲を聴ければそれで十分なのです。

新曲は往年の作品と比較される

私も以前、とある作曲コンクールの本選会で、審査員からの講評を受け取って読んだところ「あなたの作品はモーリス・ラヴェルの模倣だ」などと書かれた事があります。

心地よく聴こえるメロディーや和声、ノリが良く心躍らされるリズムは既に出尽くされており、「オリジナル」として出品したところで、長い歴史の中から類似した部分を取り上げられて「何かの模倣」と言われるのがオチです。

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“ド”~“シ”までの12音に加え、2度~8度までの和音、そして全音符から32音符(くらい)まで使用したリズムの組み合わせは、それこそ天文学的な数字となりますが、それ以上に作曲家の数が天文学的な人数にまで膨れ上がっている事も事実ですので、仕方ないのかもしれません。

今、我々は新たなる時代の入口に居るのか、それとも先が見えない出口に立っているだけなのか、このシリーズで少しでも解明に繋がれば良いと思っています。

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