昨日の記事に引き続き、スペイン・マドリードのタブラオLa Taberna de Mister Pinkleton(Flamenco La Quimera)の鑑賞レポートから、今回はこのタブラオで観られるフラメンコ公演の流れや専門用語、また鑑賞のポイントとしてフラメンコ独特のリズムに関する一考を交えています。
フラメンコのノウハウを少しでも理解してから鑑賞に臨むと、フラメンコ鑑賞もより一層楽しいものになるのではないでしょうか?
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目次
フラメンコの用語と演奏者
先ず最初に、フラメンコの専門用語について、基本的なものを挙げておきます。
- バイラオーラBailaora…女性の踊り手。男性はバイラオールBailaor
- カンタオールCantaor…バックで歌(カンテ)を歌う歌い手
- ギタリスタGuitarrista…ギター奏者
- パルマPalma…手拍子
- ハレオJaleo…「オレー」という掛け声
基本的にステージへの出演者は5~6人で、そのうち踊り手が2~3名、歌い手が2名、ギタリストが1名という構成です。公演によってはヴァイオリンやカホンが使われる事もあったり、またギタリストが2名居る場合もあるのだとか。
演奏者たるもの、表現の幅を広げるべく楽器の数やバリエーションを増やす事に躍起になるのはフラメンコも一緒の様ですが、JAZZのビッグバンドの様な大編成は見た事がありません。あくまでも“室内楽”の域に留まるのが、フラメンコの伝統なのではないかと。
La Taberna de Mister Pinkletonで観るフラメンコ
La Taberna de Mister Pinkleton(Flamenco La Quimera)のフラメンコ公演は、基本的に1日3回。それぞれ19時、21時、23時の開演となっています。予約や座席に関しては、昨日の記事をご覧下さい→La Taberna de Mister Pinkleton食事付きフラメンコ€60!料理のメニューと味をレポート!
公演はおよそ90分、途中10分程度の休憩を挟んで前半と後半の2部構成です。出演者は5名、踊り手と歌い手が男女1名ずつ、加えてギタリストが1名。
今回は珍しく(?)、カンタオーラの女性によるMCもありました。この女性、モデルの菜々緒に超ソックリ!このMCが観客に花を渡す演出や、また中盤には観客が数名ステージに呼ばれて一緒に踊るという参加型のイベントも!(実は私自身も選ばれてステージで踊らされてしまった…)。こんな演出があるのも、最強の口コミを誇る所以なのかもしれませんね。
観光客向けの演出はあるものの、演技の質も文句なし!純粋にフラメンコを体験したいという人にもピッタリだと思います。
感情を限界まで高めて力強く演技する姿!迸る汗が、その迫力を物語っていますね!余りにも激しい動きをする為か、踊り手は最初から最後までフル出場せずに2名が交代交代で出てくる様になっていました。
勿論、ペアによる演技も然り!この時、バイラオーラ(女性)は曲線的、バイラオール(男性)は直線的な動きで踊るので、その点を注目して見ると面白いです!
独特のリズムの取り方に注目!
フラメンコの見所として、今回はリズムの取り方について特に注目して鑑賞してみました!幸か不幸か、今回はステージの側近の席を宛がわれてしまいましたが、お陰で踊り手のステップを間近で観る事が出来たので、良かったのかもしれません。
先ずは踊り手たちのステップですが、タップダンスの様に足を床に打ちつけて大きな音を出して表現しています。でもアメリカ発祥のタップダンスと違って、アップビートよりもダウンビートに重点を置いたステップの様に見えました。
床には、この様な分厚いベニヤ板が貼り付けられています。私の席だと、バイラオーラ達がほんの数十センチ先で激しくステップを踏むので、その迫力と言ったら凄かった!
フラメンコ独特の手拍子「パルマ」
また、もう一つ注目したのは、カンタオールが叩く手拍子(パルマ)。フラメンコのパルマには高い音(セコ)と低い音(ソルダ)があって、曲相によって使い分けているそうですが、ソルダの時は手のひらを少し凹ませて中に空気を含めるような感じで叩いています。
実際に聞こえてくる音も、パチパチという音ではなくポコポコという残響を多く含んだ音になっていますが、これによって弱く叩いた音でも歌やステップの音に掻き消される事なく客席に聞こえてくるので、こういう所も計算されているのかと納得!
ちなみに、演奏者からたびたび噴出する掛け声(ハレオ)ですが、「オレー(↘)」という様に尻下がりのイントネーションで発音していました。恐らく日本人の多くは「オレー(↗)」という尻上がりのイントネーションが定着しているかと思いますが、本場とは違っている様ですね。
12拍子のリズムを知る
ところで、フラメンコのリズムについて少し専門的な話をすると、フラメンコの音楽は「コンパス」と呼ばれる10+2の12拍子を基本とし、強拍と弱泊の組み合わせを変えてバリエーションを出しています。他にも8拍子や6拍子を基本とするコンパスを使った曲もあって、バリエーションは様々。今回は12拍子のコンパスに照準を当ててみたいと思いますが、この12拍子コンパスが使われた主なリズムの一例を挙げると次のとおり。
この12拍子をループさせ、曲を終了させる場合は基本的に10拍目で演奏を止めます。アレグリアスなど、弱泊から入る音楽なんて普段なかなか耳にする機会は無いですよね。最初はとっつき難い部分もありますが、何度もループしているとだんだん耳に馴染んで来ます。
このタブラオでの公演中は、曲目が書かれたプログラムがある訳ではないので、今演奏されている曲にどのリズムが使われているのかハッキリ分からない事も多いのですが、少なくともこの12拍子が基本となっている事を頭に入れておくと、フラメンコ初心の方でも少しは楽しめるのではないでしょうか?
口コミ最強!お勧めのタブラオ
と言う訳で、2回にわたってお伝えしたスペイン・マドリードのタブラオLa Taberna de Mister Pinkleton。口コミの良さを信じて訪れてみましたが、その評価に嘘偽りは無いと感じました!
1ドリンク付きで€30と相場の中では決して安くはないですが、実力派の奏でる本格的なフラメンコ間近で見たいという方は是非訪れてみて頂ければと思います!
こちらのタブラオの会場の様子や食事メニューについては、昨日の記事をご覧下さい→La Taberna de Mister Pinkleton食事付きフラメンコ€60!料理のメニューと味をレポート!
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