ここ数日は、東京の名門私立音楽大学である「東京音楽大学」および「武蔵野音楽大学」にスポットを当て、それぞれ近々開業する“新キャンパス”について触れてきました。
大学なんて、重んじる伝統が長いほど教室のひび割れは大きいもので、そんな施設に注文をつけるものなら「学び舎の環境に文句を言う暇があったら1分でも多く練習しなさい」と叱責されるだけでした。
巷の成功者に言わせれば「才能の開花に環境は関係ない」と主張される方もおられると思いますが、“気分”とか“感情”に直接作用する音楽にとって、やはりそれを学ぶ環境は大変重要だと考える人も多いでしょう。
私自身も、もしこれら2校の新キャンパス概要の様な大学で学んでいたら、行く道は変わっていただろうな…とつい考えてしまいます。音大OB・OGにとっては羨ましい限りですが、これも時代の流れですから受け入れるしかありませんね。
※この記事は江古田新キャンパス竣工前の記事です。完成後の様子はコチラ→江古田新キャンパス初の学園祭へ~武蔵野音大サンクンガーデンの防音効果の程は?
“BH”のみ残した工事現場
さて、先日たまたま近くに用事があった為、武蔵野音楽大学HPで見た「江古田新キャンパスプロジェクト」の工事現場を除いてみました。 工事用のフェンスで中を窺い知る事は出来ませんが、古い校舎は既に取り壊され、だだっ広い空間が広がっていました。
ポイントは、旧キャンパスの一部の建物を残している事。前回の記事でも触れましたが、大学の資料によると、伝統のある「ベートーヴェンホール」だけは取り壊さずに残し、改修をして新キャンパスでも使い続けるとの事です。
私はこのベートーヴェンホールで奏者、鑑賞ともに経験を持ちますが、老朽化された施設とは裏腹に音響は素晴らしく、後世に伝えるものとしては相応しいホールだと思っています。演奏者としては自分の音が良く聴けて弾き易く、観客としては絶妙な残響と響きの心地よさがあって、これを超えるコンサートホールは見たことが無いくらいです。ですから、このホールを残す事は私も大賛成ですし、新キャンパス完成後はもっと広く一般のコンサートにも利用されるべきだと思っています。
「建築計画」から広い敷地を知る
さて、江古田キャンパスは入間キャンパスに比べると敷地面積に大差がありますが、それでも前回記事でご紹介した「東京音楽大学」の“中目黒新キャンパス”とは比較にならないほど広く、都市型の音楽大学としてはなかなかのものではないでしょうか。
以前の校舎は、確か4階建てだったと記憶しています。新校舎の高さは地上5階建てですから、規模の大きい武蔵野音大の学生数に対応させて、教室の数も多くするのではないでしょうか?周りは低層住宅地が広がっていますから、最上階からの眺めはさぞかし良い事と思います。
敷地周辺の道路は住宅街である事もあってか、現状では一方通行の所も多く、歩道があっても非常に狭い為、歩行者が安心して歩ける空間は少ないと感じました。
大学HPのイメージ図を見ると、敷地周囲に緑豊かな歩行空間が確保されていますので、一般歩行者は勿論の事、チェロ等の大きな楽器を持った学生にも配慮しているものと思われます。何だか本当に“街全体”が生まれ変わる感じがしますね。
これまでにない恵まれた環境に思う事
西武池袋線「江古田」駅から徒歩5分、他にも「新桜台」や「小竹向原」も徒歩圏内であり、東京音大の「池袋」や「中目黒」には敵いませんが、数ある大学のアクセスの中では抜きん出ていると思います。
長らくの大学側の売り手市場に終止符が打たれ、学生確保の為の「サービス競争」が激化していますから、これらどちらの大学へ入学しても、私達の時代では想像もつかない程の良い環境が与えられる事と思います。しかし、【“「音大卒」は武器になる”は本当か?】で記載した通り、卒業後「収入」に繋がるかどうかは、やはり本人の実力やこれまで歩んで来た経緯など、大学生活に関わらない部分が占める所は大きいと思いますので、そういう意味では、上記の「才能の開花に環境は関係ない」という言葉は、やはり当たっているのかもしれませんね。
いずれにせよ、両キャンパスの竣工を楽しみに待ちたいと思います。