引き続き「山崎蒸溜所」訪問記をお伝えします。蒸溜所見学ツアーの開始時刻に合わせて、集合場所となっている建物の2階へ足を運びました。所要時間80分の大ボリュームツアーは、どの様な発見があるのか楽しみです。
この見学ツアーは1日5回開催されますが、1回の参加人数は25名に限定されているので、あまりガヤガヤせずにゆっくり楽しめました。その代わり、1日125名限定のある意味“狭き門”な為、特に土日を中心に希望日を押さえるのはなかなか難しいでしょう。
毎月、月の初め頃に翌々月の予約が開始されるので、土日の訪問を希望の場合はHPを細かくチェックして、予約開始時刻の時報と同時に予約を入れるのが得策です。
※コロナ騒動以降、山崎蒸留所は営業休止が続いています。営業再開時期については公式HPをチェックしてみて下さい。
誘導が徹底されたツアー
ツアーでは、1名のインストラクターが説明と共に団体を先導、加えて補助スタッフ数名が団体の後ろに付いて、置いてけぼりを防ぐという徹底した誘導が為されていました。
それもそのはず、山崎蒸溜所の敷地内には一般道も通っていて、ツアー中何度もその道路を渡るなど複雑な導線が組まれていました。“勝手に出歩かれては困る”という理由に加え、これだけ複雑だと意図せずとも知らぬ間に迷い込んでしまう恐れもあるのではないかと思います。
建物内へ入る前にアルコール消毒が義務付けられます。この先、原酒の入った貯蔵樽を素手で触れる機会もある為、この措置には納得です。
熱気ムンムンの発酵室
初めに案内されたのは「仕込・発酵室」。ここではろ過した麦汁に酵母が加えられ、発酵液(もろみ)が出来るんだとか。
入口を入った途端に感じる熱気、そして発酵の香り。発酵槽からは凄い熱が発せられて、近づくだけで熱いです。
発酵槽には木製とステンレス製とがあるそうで、原酒のタイプによって使い分けるのだそう。ステンレス製のスライム型も良いですが、木製はいかにも「槽」という感じで風情ありますよね。
更に熱気ムンムンの蒸溜室
次に通されるのは蒸溜室。ここでは発酵室で出来上がった“もろみ”を蒸溜器「ポットスチル」で蒸溜し、アルコール濃度を高めるのだそう。
室内は発酵室にも増して熱気ムンムン!Nikkaの余市工場(北海道)の見学ツアーの時はこんなに熱気を感じる事が無かったので、サントリーは本格的です。あまり長時間居られる場所ではないので、ここは基本的に素通りするだけ。蒸溜に関する詳しい説明は蒸溜室を出た所にある冷房の利いた部屋で行われました。
この部屋に並ぶポットスチルは十機ほど。意外にも小ぶりな蒸溜器ばかりでした。
蒸溜器の下には機械室。
また、ここでの滞在時間は非常に短いですが、運が良ければ出来たての原酒「ニューポット」が流れている様を見る事が出来るとの事。
実際、私が通る時に流れていたコレですよね?無色透明な、まるで清流を流れる水の様です。これでもアルコール度数は70度に達するのだそう。この後「樽」に入れて熟成が進むと、漸く良く見るカラメル色になるんですね。
貯蔵庫で長期熟成の樽を発見!
その先にあるのは貯蔵庫。ここでは説明の後、少し自由な時間が与えられて、室内の貯蔵樽を見たり触れたりする事が出来ました。
この様にズラッと並んだ熟成樽!これにみんな原酒が入っている訳ですね。近年の原酒枯渇というのは、ここにある長期熟成の樽が減ってしまっているという事なんでしょうか。
樽に書かれた年数を見ると、大体1998年から2000年のものが一番多く見られます。今から16年~18年前の原酒という事になりますが、たとえ「12年」ものの商品であっても20年を超える原酒が配合されるのが常ですから、これでも相当足らないのだと思います。「山崎18年」や「山崎25年」といった長期熟成ものは尚更なのでしょうね。
加えて、2010年台の真新しい樽も数多く見られます。原酒の枯渇がささやかれてから詰められたものだと思いますが、これらが「山崎18年」などの原酒に使われる様になるのは、何年先になるんでしょうか?
勿論、貯蔵庫には長期熟成の樽も見られました。中でも注目なのが、1924年原酒の熟成樽。もうすぐ100年の月日が経つのに、しっかりした体裁を保っているのは凄い事ですよね。
「原酒」と「山崎」をテイスティグ
ツアーの最後に待っているのは試飲会。ここでは団体客→2名客→1名客の順に個別に試飲室へと通され、座る席を指定されました。これだけ丁寧に案内されるのも凄いですよね。Nikkaの様な“勝手に飲んでサヨウナラ”とは違います。
勿論、どさくさに紛れて試飲しまくる輩を防止する目的でもあるのでしょうけど(笑)!ここでは4つのテイスティンググラスが用意され、2種類の「原酒」の他、ハイボールやロックを作る為の「山崎(ノンエイジ)」が置かれていました。尚、ここでの試飲は無料(ツアー料金に含まれています)です。
インストラクターがボードを使って説明をしてくれます。ここでは主にテイスティングの基礎についての説明が多く、「ピートの香り」や「酵母の香り」など、ただ“甘い”とか”美味しい”だけではない専門用語を用いた表現方法について学ぶことが出来ます。
マドラーやサイダーも用意されていて、本格的なハイボールを作る事が出来ます。インストラクターの解説に従って私も作ってみましたが、う~んやっぱり“ロック”で飲むのが一番かな。
他にも、滅多に口にする事の無い「原酒」を頂く事が出来るのは嬉しいところ。この「ワイン樽原酒」は甘くて豊潤な香りでGood!飲んでみると、甘い香りそのままに美味しい原酒ですが、通常よりもアルコール度数が高く、むせている人もチラホラ。少し加水すると飲みやすく、香り立ちも増して良いかもしれません。
蒸溜所ツアーのまとめ
個人的にはなかなか充実した内容だったと思います。最後の試飲に使われる原酒が、有料試飲の場では1杯100円~300円で提供されている事を考えると、1時間にわたる蒸溜所巡りに加えこれらの原酒が飲めて、お一人様1,000円というのはお得感があります。参加費無料のNikka余市工場と比べても、断然こちらの方が満足感が高いです。近年のブームによってなかなか予約が取り難い部分もありますが、まだ行った事の無い方は是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか?次回は高級酒「響30年」のテイスティングをレポートします!