新たなる【アメリカ路線発着枠】が羽田空港に齎す懸念

羽田空港の昼間発着枠におけるアメリカ路線について、日米協議が昨日ついに合意に至った模様です。 これによって、現在成田空港から出ているアメリカ路線のうち、ニューヨーク行き等の基幹路線が、今秋から羽田空港発着へと切り替わる事になる為、羽田空港を贔屓に利用している方にとっては朗報となります。

報じられない羽田空港のデメリット

TVのニュースや新聞など、今回の合意を賞賛する記事が多く見られる一方、それが齎すデメリットについては一切報じられていません。それもそのはず、東京都心に社屋をもつ多くの報道メディアにとって、羽田空港の利便性向上が自分たちの利益に繋がる事は言うまでも無く、そんな彼らが自らの首を絞めかねない「羽田空港のデメリット」について報道する訳がありませんね。

JAL国内線羽田混雑 (2)

しかし【羽田空港アクセスについて考える】の記事でもお伝えしましたが、一般の旅行者にとって、必ずしも羽田空港が利用し易いという事はありません。そればかりか、ただでさえ混雑必至の羽田空港の更なる発着枠増は、羽田空港を贔屓に利用している方にとっても数々のデメリットを齎す事になると、私は考えています。

予想されるJAL・ANAの羽田移管便

では先ず、日系航空会社におけるアメリカ路線の発着枠を考えてみたいと思います。

今回の合意で、羽田空港の昼間時間帯に割り当てられるアメリカ路線は10本、この内半分が日系航空会社に宛がわれるとの事ですから、おそらくJALとANAあわせて5本という事で間違い無いかと思います。JALの会社更生法適用の件を鑑みると、各々の割り当ては“JAL…2、ANA…3”という形になるのではないでしょうか?

気になる就航先ですが、各航空会社ともアメリカ東海岸の都市への就航を切望していましたから、JAL・ANA共に「東京」午前発の「ニューヨーク便」は確実でしょう。それに加え、両者ともに「シカゴ便」、発着枠が優遇される事が予想されるANAは、更に「ワシントン便」なんかも、候補に挙がるのではないでしょうか。ただ、特にANAは「成田空港」を東南アジアとの乗り継ぎの重視した“ハブ空港”と位置づけている事から、現在夕方に日本を出発する路線に関しては、基本的にそのまま現状維持とするものと思います。

羽田便運賃値上げの懸念

それでは、ここから羽田発着枠増への懸念について、挙げていきたいと思います。

先ずは運賃に関する懸念。ご承知の通り「羽田」発着便は「成田」発着便に比べて同じ行き先でも値段が高い場合が多く、利用者の負担増が懸念されます。

JALシンガポール羽田便タイプE

例えばJALシンガポール行き。この路線で“基幹路線”となっているのは「羽田10:50発」および「シンガポール22:00発」の各便で、大型の機材(777)が宛がわれています。この羽田便は利用者が多い為か、どの期日の「ダイナミックセーバー」運賃を参照しても「タイプE」となっていて、最安値となる「タイプF」が殆ど見つからなくなりました。

しかしこの路線が「成田空港」発着だった2年前までは、最安値の「タイプF」が問題なく表示されていました。タイプEとFとでは往復10,000円も変わってきますから、これは繁忙路線に対する実質的な「値上げ」と言って過言ではないでしょう。現状「成田空港」発着のニューヨーク路線が「羽田」へ切り替わった際には、これと同じ処置が施される可能性があるという事です。

空港混雑によるサービス低下

アメリカ東海岸への羽田発着便が設定されますと、出発のピークとなる午前9時~11時の間、羽田空港のチェックインカウンターやラウンジを含めて、相当な混雑が予想されます。

「コンパクトな空港」を謳っている羽田は、成田空港と比べて出発ロビーやチェックインカウンターの大きさ、また上級会員向けのラウンジも含めて、多客に対するキャパシティーを持ち合わせているとは到底言えないでしょう。

羽田空港に移管が予想されるアメリカ路線は、どれもボーイング777の様な大型機である事から、今秋から同時間帯の羽田空港国際線ターミナル利用者は、激増する事が見込まれます。特に年末年始休暇やGW、お盆などの時期の混雑は、計り知れません。これは「アメリカ路線」以外の多くの羽田空港利用客にとって、大きなサービス低下に繋がる事でしょう。

滑走路混雑による遅延のリスク

混雑するのは空港内だけではありません。タダでさえ離発着する飛行機で混雑している羽田空港の滑走路は、今回の増枠によってピーク時間帯の混雑に拍車がかかる事は容易に予想できます。

羽田北ルート着陸待ち

現在でも、この様に羽田への着陸許可待ちの上空旋回は頻繁に見られます。これが更なる便数の増加により、国際線だけではなく国内線にも多くの影響が出始めるのではないでしょうか?

羽田空港発着枠増加懸念

しかも、羽田空港の北側へと離発着する「北ルート」は、現在「南風運用」時の着陸の際に、離陸便の進路を塞ぐ航路になっている事から、同じく北ルートである北米路線の着陸便が増える事によって、更なる“離陸待ち”や“着陸許可待ち”が増えるのではないでしょうか?これは“定時発着率No.1”を謳っているJALにとっても痛い話ですね。ロンドンやパリ、国内線では札幌便など、北から飛んでくる便への影響は計り知れません。

また、羽田空港の北ルートは、離陸・着陸とも首都圏の住宅密集地を飛行する事から、今回のアメリカ路線の増枠によって1日20回もの新たな騒音被害が生まれる事になります。

以上、この様にガムシャラな羽田便の増殖は、一部の利用者が“一時”のメリットを受ける代わりに、多くの人が“日常的”なデメリットを受ける事にも繋がると考えています。空港アクセスの件もそうですが、インフラ整備が整う前に便数だけ闇雲に増やす様な事は、いい加減止めてもらいたいものです。

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