私は数年前から3年間、日常的にFX取引を行っていました。普段から海外旅行などで「外貨」が念頭にあると、FX(為替証拠金取引)に興味が沸いてくるものです。
FX取引を開始した個人投資家の9割が半年以内に市場を去ると言われる中、3年間も続けられた私はある意味トップクラスの部類に入るのですが、それでも辞める時のトータル収益はトントンの状態で、殆ど利益を出せずに終わりました。
とは言え、私が資産を失わずにFX取引を終える事が出来たのは、私がFXを開始した時がアベノミクス相場が始まった当初で、単純に“ドル買い・円売り”のスタンスを続けていれば誰でも勝つ事が出来た相場だった事に他ならず、仮に今からまた取引を再開したとすれば、勝ち続ける自信は全くありません。
運が良かった私は、資産を失わずに済んだ事に加え、個人投資家(特に素人)がFX取引に手を出す事による大きなデメリットがどの様なものか、身を持って体験し、知る事が出来ました。そこで、これからFX取引を始めようとお考えの方へ、私の3年間の取引の経験を元に、FXはおススメ出来ない理由をお伝えしますので、是非もう一度考え直す材料の一つにして頂ければ幸いです。
ボラティリティが高い今、個人レベルでの取引は危険!
ここ最近、為替相場は連日の様に「急騰」「急落」という言葉がニュースで流れています。大きな目で見れば、これでも日常的な値動きの一つに過ぎないのですが、たった半日も経たないうちに1円2円と動いてしまう相場では、個人のレベルでは到底歯が立つものではありません。これは、近年「ミリ秒」と呼ばれる自動取引が盛んで、1000分の1秒あるいはそれ以下の速さを競い合う取引が、大手証券会社の間で行われている事が原因の一つにあり、個人投資家がいくら自宅のPCの性能を上げた所で太刀打ち出来る物ではありません。
2015年1月の「スイスフランショック」は記憶に新しい事と思います。これだけ大きく価格が飛ぶ(窓を開ける)事態が発生したのも、近年の超高速自動取引が齎した結果なのでしょう。この時、スイスフランのロング(買い)を入れていた人は、一瞬にして数百万円の利益を得た事と思いますが、それと同じ数だけ反対に数百万円の損害を被った人が多数いるのです。
各FX取引では、証拠金が一定水準を割るとアラートが出て、やがて自動で損切りしてくれる保険の様な機能が備わっていますが、スイスフランショックの様に一瞬にして値が動く場合は、その中間の値が全く存在しない事になる為、事実上「自動損切り」は機能しなくなります。この為、“○○円を切ったら損切り”という予約は一切受け付けられず、大暴落した価格で持って約定、一瞬にして数百万円のマイナスが生じてしまうのです。
個人投資家をターゲットにしたメディア報道
テレビや新聞、ネットの各ニュース報道は、個人投資家の不安を煽ります。例えば株価が1日大きく下落しただけで「景気減速・暮らしに影響」などと報道し、逆にその値を戻しただけで「株価急上昇・景気回復」と早くも楽観的な表現でもって大げさに表現します。
この様に、少し下げただけで「急落」と不安を煽り、少し上げただけで「急騰」とはやし立てる。株や為替は「上がったら下がる、下がったら上がる」の繰り返しですから、最近の急騰・急落も先述の理由によってボラティリティ(変動性)が高いだけで、実際は細かい値動きのひとつに過ぎません。
結局メディア各社は大きな「見出し」が欲しいだけ。その言葉に惑わされて高値を掴まされ安値で手放す、そんな個人投資家は格好の“カモ”です。
少ない財源で大きな利益を得ようとする
大手の証券会社などは、数千億円の資産でもって取引をしています。それに対し、個人はたかだか100万円、それにすら満たない証拠金で始める人も少なくありません。FXで数万円あるいは数十万円の利益を得ようとすれば、レバレッジ25倍でも最低30万円分くらいは運用に出さなければなりません。100万円の資産を持つ人が、その3割を市場に投げ出す訳ですから、如何に“博打”かお分かり頂けると思います。1000億円の会社が、日常的に300億円を25倍のレバレッジで運用に回すなんて考えられません。
勝てる人はどの様な人か?
株式や為替に関するアナリストには、元証券マンという方は多く、多彩な知識と情報の収集力を持っています。証券マンとして勤務している身分の間は、個人的な取引は禁じられている為、身を粉にして働いて大きな利益を得たとしても、みんな会社に吸い取られてしまう様です。そんな実力者たちが自由とお金を求めて独立し、個人的な取引で大きな利益を得ているケースが多い様です。
つまりは「証券外務員」などの資格を持ち、大手証券会社で戦える「プロの実力」が無いと、為替取引なんてものは勝ち目が無いでしょう。
私が取引をして得たもの
私は3年間の取引を終えて、特に大きな利益を得る事はありませんでしたが、その代わりとして、為替動向やテクニカル分析等、値動きの予測に繋がる知識を得る事が出来ました。勿論これは、私がFX取引の中で一時資産が半分に目減りした経験や、それをトントンにまで戻したハングリー精神から培ったものではありますが、単に運が良かっただけの事でありますから、決して人に勧めるものではありません。
これからFX取引を始める事を検討している方は、もう一度よく考え直して頂く事をおススメします。