尾道から新幹線に乗って広島市内へやって来ました。ここは日本一の路線距離を誇る路面電車(広電)がある大きな街で、立派なビルが幾つも林立しています。
そんな広島市内で一番見たかったのは「原爆ドーム」。あまりにもベタ過ぎて何を今更という感じもしますが、この建造物は戦争の恐ろしさを知ると共に、大正時代に立てられた近代建築の造形美や歴史的な意味に、改めて魅力を感じるものでもあります。
広島県産業奨励館の造形美
広島駅から広電に揺られること15分、「原爆ドーム前」で降りると、木々に囲まれた自然公園の中に廃墟の西洋建築が姿を現します。
木造建築が当たり前の当時、市民はこの様な斬新な西洋建築に大そう驚いたそうで、建設当初から市内の観光名所になっていたのだとか。
廃墟としての魅力は、長崎県の「軍艦島」に勝るとも劣らずですが、これが自然による風化ではない点には、心が痛む思いです。
広島県のHPによると、在りし日の姿「広島県産業奨励館」だった頃は、物産の展示や販売促進を目的とした施設として使われていたそうですから、お土産コーナーや観光案内所を備えた広島観光の拠点だったのかもしれません。今ではどの都市でも当たり前の様に「物産館」がありますが、当時としてはかなり斬新な施設だったのでしょうね。ドーム型の丸屋根
原爆ドームの最大の特徴は、やはりこの丸いドーム型の丸屋根ですよね。この屋根は「クーポラ」とも呼ばれており、屋根の重さを効率よく壁面に伝える事で、それ以外に支柱を作る必要が無くなる事から、教会など大きな空間を覆う屋根として適しているのだとか。
確かにこれまで見てきたヨーロッパ各国の教会では、講堂の大空間を覆うこの様なアーチ状の天井が幾つも見られましたね。この産業奨励館の設計者ヤン・レツルJan Letzel(1880~1925)はチェコ人ですから、それもナットク!
設計士の祖国チェコ・プラハにも見られるクーポラ
そのヤン・レツルは、祖国よりも主に日本で活躍した人物だったそうですが、彼の設計した建物は既に戦災などによって残されていないそうです。
しかし彼の祖国チェコの首都プラハにある通産省の庁舎Ministerstva průmyslu a obchoduは、原爆ドームの在りし日の姿に似ているとして有名ですよね。私もプラハを訪れた際にこの建物を見られれば良かったのですが、この庁舎は観光客があまり近づかないエリアにある為、カメラに収める事は叶わず…
でもプラハの街には、その他にも似た様なドーム型の屋根を持つ建物がありました。例えば、モーツァルトがオルガンを演奏したとされている「聖ミクラーシュ教会」。このバロック建築のクーポラの内側には、美しい「聖三位一体の祝典」の天井絵が描かれています。
他にも、カレル橋の袂にある「聖フランティスク教会」もドーム状の屋根を持っています。
これらの教会ではコンサートが頻繁に行われているので、訪れた際には美しい内装を見に行くがてら鑑賞に臨んでみるのも良いかも。チケットも安く、例えば今度行われるクリスマスコンサートの場合、CLASSICTICのHPから購入しても一番高い座席でも29€と破格!物価の安いチェコならではの楽しみですよね。
ちょっと話が逸れましたが、そんな美しい佇まいを今に残したかもしれない広島県産業奨励館。建築から今年で101年を迎えますが、これがもし在りし日の姿だったら、この川からの景色はどれほど美しかったでしょうね。そういう点でも、戦争なんて二度と起こしちゃいけないのだと思うところです。
次回は宮島「厳島神社」で、誰も居ない早朝の大鳥居に迫ります。
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