淡路島南部、道の駅「福良」の横になにやらモダンなデザインの建物が建っていました。
「淡路人形座」と書かれたこの建物の中には人形浄瑠璃の劇場があって、1日数回の定期公演が上演されています。日によっては休館日もある様ですが、この日はちょうど都合の良い時間に公演があったので、鑑賞してみる事にしました。
モダンな建物へ入って受付へ
そう言えば、周辺の道路にもこの看板が幾つか立っていました。普段から日本の伝統芸能に触れる機会なんてそうそう無いですから、これは良い機会です。早速中へ入ってみましょう。
階段を上って入口を入ると、受付とその横にお土産コーナー。土産物は主にせんべいや人形焼など、人形の絵が描かれたお菓子が売られています。
この日の鑑賞料金は1,000円。今月(9月)は〔傾城阿波の鳴門〕という45分の演目が通常上演されているのですが、月の内4日間だけは〔戎舞〕という30分の公演に代わり、私が訪れた日はその短い上演時間の日。その分チケット価格も通常価格の1,500円ではなく1,000円で鑑賞する事が出来ました。※価格は社会情勢により随時変動します。調べた所によると、淡路島にはかつて40もの人形座があったそうですが、時代と共に減少し現在はこの淡路人形座を残すのみとなってしまったそうです。このモダンな造りの人形座は、それらを集約させる意味もあったのだとか。尚、この建物は遠藤秀平という人物の設計によるものだそうです。
意外と広い講堂
受付を済ませて奥へ進むと客席があります。開演までまだ少し時間があったので、客席のある講堂をちょっと見学してみましょう。
講堂は横に長く、竹で出来た長椅子が6列くらい並べられています。舞台袖には語り手(太夫)と太鼓があって、公演中の音声はこの2名からのみ発せられます。
この太夫が台本を置くのに使用する台(見台)は、漆塗りの高価なものらしく、確かに近くで見ると重厚で艶やかなボディが高級感を漂わせていますね。ヤフオクで2万円から出品されているものとは格が違います。
こちらは人形の動きに合わせて叩かれる太鼓。サイズは小ぶりで、公演ではコロコロとした高い音程が出ていました。あまり強く叩かない為か音量は小さく、大相撲で使われる“相撲太鼓”の様な残響は聴こえてきません。
会場のキャパシティは意外と大きく、詰めれば150名くらい入りそう。しかも客席の横には階段があって、2階席にも行ける様になっていました。修学旅行などで訪れて鑑賞する学校もあるのかもしれませんね。
客席の後ろには展示品がズラリ!
客席の後方には、ガラスケースに納められた展示品の数々!
人形の仕組みから操り方まで、詳しい解説が書かれていました。この福良がある南あわじ市には「淡路人形浄瑠璃資料館」もあるので、興味のある方は併せて訪れてみるのも良いと思います。
人形の展示もあります。この右下にある女性の顔ですが、公演前の「人形解説」の中ではこれが鬼の顔に変化するパフォーマンスがありました。こうして見ていると、日本人形の顔って本当に不気味ですよね…。別に怒った顔でないのに、無表情な顔から独特の感情が感じられます。
30分公演の〔戎舞〕
さて、この日の公演は〔戎舞(えびすまい)〕という演目で、戎様が酒を飲みながら上機嫌に観客の幸せを願うというもの。登場人物は戎様の他に御付の人物が一人の合計2人、これを数名の人形遣いが操っていました。
公演時間はおよそ30分。初めに「人形解説」があった後、太夫と太鼓の人が出てきて戎舞のスタートです。公演中はもちろん撮影NGなので写真はありませんが、コミカルで繊細な人形の動きには感慨深いものがあります。戎舞の最後には、遠近法を利用した背景が次々に変わってゆく演出があって閉幕。公演時間はあっと言う間で、個人的にはもう少しじっくりと味わいたいと思うところ。登場人物も2人だけなので、ちょっと寂しいかな~。45分の公演の時はもう少しボリュームも大きいのだと思います。
公演後に記念撮影
公演が終わると代表(?)の方(ご紹介頂いたのにお名前を忘れてしまった…)が戎様を連れて出てこられ、記念撮影をさせてくれました。また戎様を私にも持たせてくれるなど、交流の時間を頂けたのは嬉しい限りです!
戎様を持った感想は、意外と軽い!しかし私が持った瞬間、戎様からスッと魂が抜けてしまいました。やはり人形に命を吹き込むのは、並大抵の事じゃないんですね。
最後は幸運を齎してくれるとされる戎様の扇子で頭をなでてもらい退散。これで過去には宝くじに当たったという人もいたのだとか?私もそれにあやかる事が出来れば良いのですが。
兎にも角にも、心温まるひと時を過ごす事が出来ました。
それにしても淡路島に人形浄瑠璃の伝統があったなんて知りませんでした。Wikipediaの淡路島のページを見ても、文化の一つとして人形浄瑠璃の記述があるだけですから、まさかこんな本格的な講堂があるなんて思いもしません。
現在この地方では、鳴門海峡のうずしおを世界遺産にする運動が行われているみたいですから、これが実現すればこの人形座にも沢山の外国人観光客が押し寄せる事でしょうね。今回は贅沢にほぼ貸し切り状態で鑑賞する事が出来ましたが、この様にゆっくり観られるのは今の内かもしません。
短い時間と手ごろな料金で楽しむ日本の伝統芸能、興味のある方は是非一度訪れてみて下さい。
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