先日、京王電鉄から“クロス・ロング転換シート”の新型車両導入についてプレスリリースが出されました。同時に、通勤時の有料着席サービスを開始し、それ以外の時はロングシートに転換して運用するとの事です。
同じようなサービスは、既に東武東上線の「TJライナー」で行われていますね。昨年8月には西武鉄道も同様の新型車両のプレスリリースが出されていましたし、各線ともサービス向上が期待されます。
6人掛けロングシートの登場
ライナーとして着席料金を徴収する運用はさておき、私が注目しているのは、東武鉄道の「TJライナー」で使われる車両の様に、ロングシートで運用する場合の快適性です。
私も以前、ロングシートの運用で利用した事がありますが、片側のみで簡易ながらも肘掛を備えたシートは、定員いっぱいの6名で座っても余裕があり、とても快適でした。本来7名が着席するスペースに6名で座る訳ですから、快適なのは言うまでもありません。
両端のデッドスペースは生まれるものの、各々に備えられた肘掛によって、一人当たりの占有面積はかなり広がります。この車両は限定的な運用の為、なかなかめぐり合う機会が無いのが難点…、これがスタンダードになればイイのにな、と思い巡らせていました。
そもそも“ロングシート”は都合が良かった
各社で採用されているロングシートには、現在必ず「スタンションポール」がついていて、定められた定員数ピッタリで着席する様になっていますね。しかし朝夕の通勤ラッシュ時には、中年男性でギュウギュウ詰め!中には体を前に倒して左右との差を作り、工夫を凝らしている方も見受けられます。
不特定多数の利用者を対象とした首都圏の鉄道において、以前にあった仕切りの無いロングシートはある意味都合が良かったのだと思います。一人の幅を定めない事から、体格の大きい人や小さい人までバランス良く、誰でも難なく着席する事が出来ていました。定員7名を“目安”とし、体格の大きい人なら6名、細身の女性ならば8名で座る事だって出来ていたはずです。
しかしある時を境に「7人掛けを6人で座るのは悪だ」との少数派の意見が鵜呑みにされ、何時しか“強制7人掛けシート”が定着してしまいました。
7人掛けは物理的に無理がある
平均的な成人男性の肩幅は、洋服の厚みを加えると50cmを優に超えます。それを44cm~46cmピッチのシートに押し込めば、自ずと無理が生じる事は明白でしょう。
日本人の体格は一昔前に比べて大きくなっていますし、特に“さとり”世代と呼ばれる若い人達(特に男性)は平均身長も数センチ高く、平成初期の規格がそのまま当てはまるはずありませんね。朝夕ラッシュは成人男性の利用が大半を占めますから、定員着席は物理的に無理があります。
“平等”の定義を改めるべき
“誰でも平等に着席を”と言われていますが、体格の違いによってその快適性に差が生まれている現状は、果たして平等なサービスと言えるのでしょうか?お年寄りや体の不自由な方に対しては優先席が設けられていますし、そもそも率先して席を譲れば良いだけであって、強制7人掛けにした所で彼らに対するサービスや配慮が向上する訳ではありませんから。“一人でも多く着席を”をスローガンに、着席する事が苦痛になってしまっては本末転倒です。肘掛付きシートをロングシートに運用する流れは、長らく続いた“詰め込み”主義にメスを入れる、画期的なサービスだと思っています。
この流れが加速し、首都圏在住者の通勤ラッシュ時におけるイライラが、少しでも軽減される事を祈るばかりです。
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