原爆の恐ろしさを伝える合唱曲≪原爆小景/林 光≫

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来週5/27、伊勢志摩サミット終了後アメリカのオバマ大統領が広島を訪問するという歴史的なニュースが流れていますが、突然の事で広島の方々は準備に追われて大変な思いをされている事と思います。先ほどもNHKのニュースで流れていましたが、米大統領が来るとなると、それこそ皇族方が来られるよりもセキュリティが強化されるでしょうから、原爆ドームや平和記念資料館周辺は物々しい雰囲気に包まれている様です。

日本にとっては歴史的な出来事ですが、あまりにも急な訪問決定は勘弁してもらいたいものですね。この時期に広島観光を計画されていた方にとっては良い迷惑だと思います。

このオバマ大統領の広島訪問によって、本島に米国の意識は変わるのでしょうか?米国民は未だ半数もの人が、日本への原爆投下を正当化しているというのは、我々の感覚からすれば到底考えられませんよね。まぁ確かに、中韓をはじめ大東亜の殆どの地域を支配下に置いた大日本帝国の暴走を止めるには他に策が無かった、というのも分からないでは無いですが、大量殺人兵器の使用を正当化する国というのは、何とも恐ろしいものであります。

恐ろしい歌詞の合唱曲≪原爆小景≫

林光「原爆小景」 (1)

さて、“広島原爆”と聞いてピンと来た曲があります。林光作曲の混声合唱曲≪原爆小景≫です。この作品は「組曲」となっていて、4つの細かな作品に分かれており、いずれもピアノ伴奏なしのアカペラ。混声4部ですが、各々のパートも更に細かく分かれていて、洗練された演奏技術が求められる事でしょう。

林光「原爆小景」 (2)

この作品の歴史は長く、一番初めの「水ヲ下サイ」が作曲されたのは1958年、それから半世紀近く経った2001年に最後の「永遠のみどり」が作曲されて、漸く完結に至った組曲です。それだけに作曲者の強い思いがひしひしと伝わってくる様な気がします。

林光「原爆小景」 (3)

そんな中、特に注目して頂きたいのは1曲目と2曲目。特に「水ヲ下サイ」は、一番初めに聴いた時には衝撃を受けました。女声の奏でる「ミズヲクダサイ」という“か細い”悲鳴が、男声の成す「mM7(マイナーメジャーセブンス)」の強烈な和声に乗って、正に地獄絵図と化した原爆投下直後の様子を見事に表現しています。

壮絶な情景が浮かぶ歌詞

水ヲ下サイ

アア 水ヲ下サイ

ノマシテ下サイ

死ンダホウガマシデ

死ンダホウガ

アア

タスケテ タスケテ

水ヲ

水ヲ

ドウカ

ドナタカ

オーオーオーオー

オーオーオーオー

天ガ裂ケ

街ガ無クナリ

川ガ

ナガレテヰル

オーオーオーオー

オーオーオーオー

この歌詞を読むだけでも壮絶さが伝わって来ますが、作曲者は更に個々の単語や短文を繰り返して曲にする事で、数え切れない程の被爆者、そして絶えず訴え続ける被災者の声を表している様に思えます。最後の「川ガナガレテヰル」の所を見ると、何もどうする事も出来ない絶望感を表している様で、とても印象的です。私は今でもこの曲を聴くと眠れなくなります。

林光「原爆小景」 (4)

そして2曲目の「日ノ暮レチカク」。この曲は原爆投下後の夕方の情景を描いたものだと思いますが、苦しみの末に辛うじて生き残った人々が、動けずにただじっと川岸にうずくまっている様子が表現されています。

音楽的には、女声の下降ポルタメントで寂しげな夕暮れの情景が表現された後、男声が加わってその足元に広がる恐ろしい現実の光景が徐々に明らかになってゆく様、そして最後には受け入れ難い目の前の現実を徐々に理解していく無力感。本当に心の底から見事な表現だと思っています。

日ノ暮レチカク

眼ノ細イ ニンゲンノカホ

ズラリト川岸ニ ウヅクマリ

細イ細イ イキヲツキ

ソノスグ足モトノ水ニハ

コドモノ死ンダ頭ガノゾキ

カハリハテタ スガタノ 細イ眼ニ

翳ッテユク 陽ノイロ

シヅカニ オソロシク

トリツクスベモナク

特に印象的なのは「眼ノ細イニンゲンノカホ」。曲中ではこの歌詞を短2度の音程で揺らしながらcrescendo→decrescendo、そして上昇gliss.で消えていくという何とも意味深な表現がなされています。未曾有の悲劇は、これまでに見たことも無い情景、そして人間の悲惨な状況を目の当たりにするのだという事を、私は読み取っています。

林光「原爆小景」 (9)

この楽譜の歌詞には英語訳も載っていますので、是非アメリカ国民にも、そしてオバマ大統領にも読んでもらい、そしてこの何とも恐ろしい合唱曲を是非とも聴いてもらい、その印象を伺ってみたいものです。

尚、音源はYou Tubeにも投稿されている様ですが、私はこのCDで聴いています。この作品が米国民の多くに知れ渡り、本当の意味での“永遠のみどり”が来る事を願って止みません。

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