2009年の「皆既日食」から3年、前回の失敗を胸に次こそ成功を掴むべく、私はリベンジに燃えていました。今回は、2012年5月に観測した「金環日食」の模様と、その撮影機材や観測場所について詳しくお伝えします。
雲の動きが分かる気象予報サイト
2012年の「金環日食」は、東京・名古屋・大阪という日本の3大都市圏が全て観測地になるとあって、日本中で話題に上がった事と思います。日本ほど安全かつ交通網が発達している国において、これだけ広範囲に見られるというのは、世界の日食観測においても奇跡に近い事でしょう。
私の住む関東地方もすっぽりと日食帯に入っています。これならば自宅に居ながらにして撮影出来る、と浮かれていました。しかし、金環日食となる5月21日の朝の天気予報は微妙…、雨こそ予想されていなかったものの、雲が広がり易い予報で、大きな心配の種となりました。そう、3年前の「屋久島」での悲劇が頭を過ぎっていたのです。
そこで私が活用したのが「GPV気象予報」。これは関東や近畿、九州といったエリアごとの雨量や風向き、気温等の詳細を図式化したデータを見る事が出来るすぐれもので、雨の有無だけではなく“雲の厚み”まで判断する事が出来ます。この情報を頼りに、私は観測場所を「北関東」に選びました。
前日から移動、撮影準備
「金環日食」当日は朝早い為、前日から移動を開始しました。
宿泊場所に選んだのは、茨城県の「水戸」。自宅のある日食の中心帯付近からは離れてしまいますが、北へ向かった方が雲が切れ易い予報が出ていた為、この地を選びました。
東の方向に向いた窓の部屋を用意して頂き、明日に備えます。上手くいけば、この部屋から金環日食が観測できるという訳です。因みに、金環日食は皆既日食と違って光量が強い為、撮影時にもフィルターを外す事が出来ません。私が準備したのはこの2つ。
NDフィルターの中でも、露出倍率が固定のものと可変式のものを2つ重ねて使用し、太陽の変化に合わせて手動で調節する手法を採りました。こうする事で、食分が増してきて光量が減ってきた時に、わざわざフィルターを付け替える手間を省く事が出来、撮影に集中できます。
可変式のNDフィルターも、随分と安くなりましたね。太陽がMAXの時はND100,000以上は欲しいところですが、これら2つを合わせると400×400で最大ND160,000まで対応できますから問題ありません。
また肉眼での観測の為に、専用グラスを用意しました。ただの遮光板ですと太陽が米粒の大きさにしか見えないので、これならば3倍程度に拡大して見る事が出来ます。
雲の動きに注視しながら場所を移動
5月21日の朝、宿泊していた茨城県の水戸地方は、あいにくの曇天…。空は明るいものの、太陽がはっきりと見える状態ではありません。心配が募る中、GPV気象予報によると、ここから西へ移動すれば雲が切れてくる事が分かり、車を走らせる事に。
水戸から北関東自動車道をひたすら西へと向かって行くと、予報どおり雲が切れ始め、やがて日が差し込んで来ました。GPVの予報制度は抜群です!
そしてたどり着いたのはここ、栃木県にある「壬生PA」。トイレ休憩に立ち寄ったのですが、東側に開けた丁度良い観測場所が見つかり、ここでの観測を決めました。
観測を待つ人もちらほら。ここは「道の駅」も兼ねているので、一般道からも人の流入があるのですが、それでも人が溢れかえる様な混雑は無く、撮影環境としては大変良好な場所でした。
この様にPAの東側が広大な窪地になっている事で障害物が無く、フェンスも有るので撮影者が横一列に綺麗に並ぶ事が出来ます。こんな適所を偶然見つけられた事はとても幸運です。
観測は大成功!部分日食の開始から金環日食の最大食分、そして食の終わりまで、一切雲に遮られる事なく撮影する事が出来ました。しかしながら、日食の撮影は難しい…。光量が減るごとにフィルターを回して、徐々に露出を解放していくのですが、その塩梅がなかなか上手くいきません。
肝心の“リング”になると、なかなかピントが合わずに細部がぼやけます。一眼レフの撮影において光量の要素はとても重要だという事は念頭にありましたが、これほどまで難しいとは…。尚、リングの太さにやや偏りがあるのが分かります。これは金環日食帯の中心からずれている為で、東京都心方面に居れば、ど真ん中に月が来る偏りの無い日食が見れたかと思います。2009年のリベンジを果たし、無事に日食撮影に成功しましたが、やはり皆既日食の“ダイヤモンドリング”をこの目で見るまでは、まだまだ挑戦し続けるつもりでいます。ご清聴ありがとうございました。