2/11(祝)に東京オペラシティ・コンサートホールで行われた、ピアノトリオコンサート。このコンサートの目玉は、Jazzピアニスト松永貴志氏による自作自演のピアノ演奏です。
「報道ステーション」初代テーマ曲≪Open Mind≫の作曲者でもある彼の作品がどの様なものか、また演奏を共にする2名の若手ピアニストがどの様な演奏をするのか、聴きに行って確かめてきました。
コンサートホール(大ホール)がほぼ満席
今回の会場となったのは、東京・初台にあるオペラシティ・コンサートホール。「タケミツメモリアル」で知られる大ホールです。キャパシティ1632の大ホールですが、この日は2階席を含めほぼ満席でした。
“シューボックス型”と呼ばれる縦長の箱型をした講堂や、ピラミッド型の天井を備えたこの会場は、日本では唯一無二と言って良いほど斬新なデザインのコンサートホールですが、2階バルコニー席からの眺望は良くないですよね。今回のコンサートは全席指定ですが、私は1階席の中央付近、なかなか良い所のチケットを手に入れる事ができました。しかしながら、音はそれほど飛んで来る会場では無い模様。上に抜けるのか吸収されてしまうのか分かりませんが、反響板が貧弱な事が影響しているのかもしれません。
Jazzマンらしい演奏とトーク術
この日のプログラムは2部構成。前半に3名の出演者がそれぞれソロ演奏を披露し、休憩後は2台ないし3台ピアノの作品が演奏されました。この日揃った3台のピアノはいずれもsteinway & sons製。このスタインウェイのピアノが3台揃う光景は、なかなか見られるものでは無いと思います。
出演者は、松本貴志氏の他に中野翔太氏と金子三勇士氏。いずれも80年代生まれの若手ピアニストですが、各氏ともN響との共演や音大首席卒など輝かしいプロフィールが並んでいます。この3名が演奏の合間に面白いトークを繰り広げるのですが、皆頭が切れる為か喋るスピードが速く、聞き取れない事もしばしば…。それでも会場は大盛り上がりでした。
曲目は、松永氏の自作自演を除いてはクラシック作品の有名所ばかり。演奏はどうだったかと言うと、3名とも演奏技術は大したものですが、細かな音はかなり弾き飛ばしていました。
また音の出し方も純クラシックピアニストとは違い、ハンマーのアタック音を重視する感じ。ドライで気軽に聴ける音色である一方、残響の形が全く見えてこないので、響きを重視する人にとっては物足りない演奏だったかと思います。鍵盤を押さえつけた様なデッドな音は、クラシック向きではないかもしれませんね。
松永氏の作品の感想
松永氏の自作自演は、3曲ともJazz調のナンバー。作曲者の明るい性格がそのまま滲み出た聞こえの良い作品で大盛況となっていましたが、クラシック寄りの意見としては、コード進行に意外性が無かったのはちょっと残念なところ。
またメロディの展開を装飾音の“飾り”に頼りすぎている感じも否めませんが、これこそがJazzマンの感じ方なのでしょう。加えて、メロディと伴奏が明確に分かれているので、素人には聴き易い作品だと思います。その他、金子氏の弾いたF.リスト「愛の夢第3番」「ラ・カンパネラ」なんかは、まさにリストが若い娘たちをキャーキャー言わせていた光景を彷彿させる様な演奏で、そういう意味ではこのコンサートの趣旨にピッタリだったのではないかと思います。特にファンの方にとっては、たまらない演奏会だったのではないでしょうか?
女性客をターゲットにしたスイーツの販売
ところで、今回のコンサートは「バレンタイン・コンサート」の副題が付いています。その名が示すとおり、来場客の大半は女性客でした。
休憩時間には、ロビーでスイーツの販売が行われていました。出演者のトークの中で、このスイーツに関してのアナウンスがなされたのですが、無料で振舞われるのかと思っていたら違いました…。でも皆同じ事を考えていた様で、“販売”という単語が聞こえた瞬間、会場からどよめきが聞こえたのはウケた!
その他、チョコレートの販売も。こういったビジネスは、女性無しに成立するものではありませんよね。この日、3名の出演者の元に大量のチョコレートが届けられた事は容易に想像できますが、中にはここで調達する人もいたりして…。
Jazzマンの弾き方はこういうもの
今回の3名の演奏に共通する事は、いずれも純クラシックのピアニストとは一線を画した弾き方であった事。フォルテで音量が上がるとやたらアクセントが付いた弾き方になる点は、モーツァルトやベートーヴェンに特化したクラシック演奏家にとっては眉を顰める人もいるかもしれません。
しかし楽譜に書いてある音符の全てを正確に出すのではなく、感覚的に捉えて雰囲気で弾く…これぞまさにJazzマンらしい演奏スタイルだなと感じました。厳粛な雰囲気のもと息を凝らして演奏に聴き入る、そんな肩肘張ったコンサートとは違い、手軽に誰もが参加できる良いコンサートだったのではないかと思います。
いずれにせよ、3名でこの大ホールを満席に出来るというのは凄いですよね。彼らの今後の活躍にも注目していきたいと思います。
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