ご承知の通り、2月1日より航空各社で国際線航空券の燃油サーチャージ徴収が再開されました。サーチャージの金額は原油価格および米ドルの為替レートによって算出されますが、昨年末よりOPECの減産合意や米国トランプ大統領の政策期待によって“円安・原油高”のダブルパンチ!1月31日まで1年近く続いた燃油サーチャージ無料の恩恵は遂に崩れ、今後更なる値上げが懸念されます。
価格高騰!シンガポールケロシンと米ドル
燃油サーチャージ算出に使われる「シンガポールケロシン」は、原油価格と連動した値動きをします。目安として、シンガポールケロシンの価格はWTI原油のおよそ1.2倍の値です。
昨年12月~今年1月までのシンガポールケロシンの値動きは、全くの横ばい。OPEC減産合意はしたものの、次の材料待ちでレンジ相場を形成しています。一直線での高騰を予想していただけに少し安堵しましたが、サーチャージ適用水準で安定されるのも困ったもので、次なる材料は是非とも下落のシグナルを期待したいものです。
一方、米ドルの高値推移は言わずもがな、一時期1ドル118円台にまで暴騰!トランプ氏が選挙で勝った瞬間「よっしゃ円高決定!」とガッツポーズを決めたものですが、見事に裏切られてしまいました。これが為替の怖さなんでしょうか…。
ちょっと不気味なのは、ここ最近トランプ大統領が連日の様に「大統領令」を発令して世界を混乱させているにも関わらず、為替や株価が堅調に推移している事。こういう場合、リスク回避の円高へ触れやすいというのが定説ですが、ドル/円が110円、105円方向へ下落していく素振りを全く見せません。しかもここ数日は“ドル高”けん制発言、ならびに日本の円安政策批判まで飛び出しているにも関わらず、ドル/円は112~113円を下抜けて行きませんよね。このまま下値固めが続くと、何かで少し好材料が出ただけで一気に130円まで暴騰するのではないかと、ヒヤヒヤしています…。
2017年4月~の燃油サーチャージを算出
それでは、2016年12月~2017年1月のシンガポールケロシンおよびドル円の平均価格から、2017年4月~5月発券の国際線運賃に付加される燃油サーチャージを予測していきます。
12月~1月「ケロシン」平均値…64.6ドル(a)
12月~1月「米ドル/円」平均値…115.5円(b)
(a)×(b)=7,461円(※筆者独自観測、端数切捨)
2017年4月~5月発券の国際線航空券に課される燃油サーチャージ
→ゾーンB(1段階値上げ)
現在のゾーンAより更に値上げです。欧州・アメリカ往復は倍増の14,000円、これを無料であるはずの特典航空券にまで徴収するのだから厭らしい!長距離路線のチケット発券を予定している方は、なるべくお早めに購入される事をおススメします。
値下げされないJALの運賃
ところで、一つ問題なのは“運賃”の価格。これまで燃油サーチャージが徴収されていた時は、その分航空チケットの元となる運賃額が幾らか減額されていました。
例えばJALの東京⇔シンガポールの運賃額は、サーチャージがゾーンAだった昨年2月~3月の時点では、今より6千円安い水準でした。これがサーチャージ廃止に伴って翌4月の下旬から値上げされた訳ですが…
今回サーチャージが再適用になっても運賃は変わらず…。つまり同じゾーンAだった一年前と比べて6千円も値上がりした事になります。ただ、毎回JALは値上げ・値下げのタイミングがサーチャージ改定の時期とずれる事もあるので、もしかしたら今回もじきに運賃が改訂される可能性も考えられますが、果たしてどうだか…。
サーチャージ徴収が“標準”に
これまで何度も述べてきていますが、燃油サーチャージは本来「原油価格が高騰し過ぎたから少し負担してね」という性質のものだったはずが、いつの間にか徴収が当たり前の様になってしまいました。
投機が投機を呼んで暴騰した140ドル台の時の価格と比較して「今は原油が安い」なんて呟く者も見受けられますが、そもそも2000年代前半まで原油価格は20ドル~30ドル台だった訳で、オイルショック時よりも高い今の水準は明らかに異常です。
海外旅行者にとって冬の時代がまたやって来るのでしょうか…?